ニッケイ新聞 2007年12月14日付け
JICA青年ボランティア、大学教授に続き、東京大学大学院生の佐々木剛二さん(27、総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程に在籍)がサンパウロ人文科学研究所で活動を行なっている。研究生として来年十月末まで在籍する。
学部時代にアメリカに留学するため、〇一年九月に入国。直後に同時多発テロが起きた。
宗教や民族の対立を目の当たりにし、複雑な思いを胸にしていたとき、同じ留学生の日系ブラジル人に出会う。
「国で分ける見方だと分からない〃多重な人〃を理解する糸口を発見したような気がした」。
帰国後、ブラジル人集住地区を訪れ、移動の多いデカセギたちの生活にも触れ、修士論文『日伯における出稼ぎ移住者の経験』としてまとめた。
送り出した側であるブラジルでのフィールドワークの必要性を感じ、昨年十月から、約八カ月間、カンピーナス大学の国際移住研究センターの客員研究員として在伯、日系社会との関わりを持った。
その体験を「届かぬ愛国心のために」として、国立民族学博物館の国際シンポジウムで発表。旺盛な移民研究を行なう佐々木さんの今回のテーマは、『七、八〇年代移民知識層から見た倫理意識』。
「日系社会のモラルは、移民独自の観点で構築されてきたのでは。移民の知識階級がそれにどういう思索活動と意味づけをしてきたかを切り取ってみたい」と語る。
人文研のHPのリニューアルを手掛け、雑務もこなしながらも、「七、八〇年代を転換期と位置付け、突出した一世リーダーの存在に迫りたい」と意気込む。東京都出身。