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百周年=絹谷幸太さんが記念彫刻=移民の歴史知ってほしい

ニッケイ新聞 2007年12月13日付け

 【共同】日本からブラジルへ移民が渡って二〇〇八年で百周年になるのを記念し、ブラジル留学の経験がある彫刻家絹谷幸太(きぬたに・こうた)さん(34)が両国の石を彫刻したモニュメント制作に取り組んでいる。茨城県笠間市の石材店で十二日、日本の石を使った作品が披露された。
 絹谷さんは「ごく普通の人たちがどんなに苦しくても誇りを失わず、言葉や習慣を残していった歴史を、若い人に知ってほしい」と話している。
 作品は白い花こう岩を使った石の彫刻(高さ約二メートル、幅約五メートル六つで、総重量約百トン。寝転べるよう平らだったり、中にトンネルや滑り台があるものも。披露会に参加した児童や在日ブラジル人学校の生徒らが歓声を上げ、よじ登っていた。
 絹谷さんは〇三年、サンパウロ州立大に留学。当初、移民についてあまり知識はなかったが、日系の人たちの話を聞いたり資料を見る中で、多くの移民がマラリアに倒れたことなどを知り「彫刻家である前に日本人として、移民の歴史を無視できない。鎮魂の礎として何か残したい」と思うようになったという。
 石は来年二月、横浜港から運び出され、桜を植樹するなど移民になじみの深いブラジル・サンパウロ市の公園に到着する。地元の赤い花こう岩と組み合わせて六月に最終的に完成させる予定だ。「全身で触れてもらい、夢と希望が満ちた空間になれば」と願っている。