サンパウロ日伯援護協会(菊地義治会長)はサンパウロ市リベルダーデ区の本部5階で11日午前と午後、それぞれ臨時評議員会(30人出席)と臨時総会(70人出席、9人委任状)を開催し、「保健部門と分離した組織の創立」を承認した。今月中に「Enkyo」名を入れた新団体(非営利団体)を創立させ、「公益社会福祉法人」登録に支障の起きている傘下福祉組織をそちらに移すことを決議した。
もし、連邦政府の「公益社会福祉法人」登録を失った場合、援協全体で月々約130万レアルもの税金等の支払いが必要となるため、登録維持は死活問題といえる。ところが数年前から連邦政府の登録制度が改変され、厳しくなってきた。
かつてブラジリアで手続きしていたものが、各団体が所在する州や市に最初に監査する権限が与えられた。それにも伴って、たとえばスザノ市のイッペランジアホームの場合、入居者の大半が市外住民であり、「市が指定する地元住民を60%入居させれば認可してもいい」との条件が付けられる事態となった。
その場合、保護された路上生活者、元麻薬中毒者などが回されてくる可能性もあり、従来のホーム入所者との間に軋轢が生まれることを危惧した援協では、同ホームの団体登録を援協から独立させる〃苦肉の策〃を講じることにした。登録問題が生じた傘下組織だけを、別組織を作って移管し、援協本体の登録に影響を及ぼさないようにする考えだ。新組織は、審査がもっと簡易な「非営利団体」として設立し、その分、税金等を払うことになる。
援協は、友好病院など五つの医療事業所、七つの社会福事業所を運営している。後者の登録更新が特に厳しくなっており、七つのうちで市の正式登録ができたのは三つに過ぎない。いずれも厳しくなる流れにあるが、現状ではスザノが特に難しい状況にある。
援協の年間収支の95%は友好病院の売り上げであり、その余剰金を万年赤字の福祉施設に回すことで、全体としての均衡を保ってきた。傘下福祉団体に登録上の問題が生じたことで、援協本体まで登録できなくなれば存続が危ぶまれる事態となる。
本体が「公益社会福祉法人」登録を維持するには、病院売上げの2割を社会還元(無料診療など)するか、病床の6割をSUS患者に充てることが連邦政府から求められており、援協としてはその代わりとしてサンミゲル・アルカンジョにSUS病院を新設するなどの対処をしてきた。これ以上、交渉の不安材料を抱えたくない援協としては苦渋の選択だった。
評議員会や臨時総会では菊地会長、毛利連副会長、佐々木弘一会計理事らが数字を挙げて1時間ほど説明し、特に異議が申し立てられることなく承認された。
菊地会長は「新組織だから名前やCNJP(団体登録番号)は変わるが、ホームの運営は今まで通り。理事会や定款もほぼ一緒だし、本部もこのビルの中。書類上の変化であり、安心してほしい」と強調した。