ニッケイ新聞 2007年12月6日付け
四日に国連経済開発協力機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(Pisa)の結果が発表され、ブラジルは読解四八位、科学五二位、数学五三位(五七カ国中、ただし読解は五六カ国参加)であった。この調査は、三年毎に行われ、一五才の学生が対象。調査毎に三分野の一つに焦点を当てるが、昨年は科学に焦点が当てられていた。
調査毎に問題も違い、単純比較は出来ないが、読解は三九三点で前回より一〇点下がり、トップの韓国とは一六三点差、数学は三七〇点で一四点上がり、トップの台湾とは一七九点差、科学は三九〇点で変わらず、トップのフィンランドとは一七三点差(満点は八〇〇点)。
傾向としては前回調査と大差ないが、問題は、ブラジル学生の大部分が一~五または六段階の一またはそれ以下ということ。五日のフォーリャ紙によれば、読解で五六%、科学で六一%、数学で七三%がこのレベルだった。これは、学生の知識が基本的なものに限られ、日常生活や他と関連付けた応用力がないということにつながる。
先月三十日のエスタード紙によれば、科学の点数が悪いことについて「科学はブラジルの教育の優先分野ではないため」という意見もあったというが、読解や数学の結果も同じでは、ブラジルの教育の質が世界に追いついていないと言う他はない。五日のエスタード紙には、OECD担当者が、ブラジル政府がこの調査への参加を奨励していることを勇気ある行為とする一方、「数学での改善が見られたことは他国の見本となる」と言ったと報じているが、今回の結果は、ブラジルの教育への大きな挑戦である。
今回、教育省は州毎の結果も分析しているが、連邦直轄区(DF)が数学と科学で一位、読解で二位、続くサンタカタリーナ州は読解で一位、数学と科学で二位。一人あたりの所得では全伯二位のサンパウロ州は、数学が平均点である他は平均以下で、全国平均を引き下げたと非難された。しかし、サンパウロ州の落込みは全伯テストでも指摘済みで、サンパウロ州の教育の質向上は必至である。ロンドニア、セルジッピ両州が三分野とも全国平均を上回ったことも注目された。
なお、この調査でも私立校と公立校の学力差は際立ち、私立校だけなら、ブラジルは世界で二七位に入っていたという。また、社会階層による相違はないという。
この調査結果についてのコメントには、「大学で初等教育部分の欠けを補う必要がある」という物理の教授の言葉もあった。生物の点は採れても物理、化学、天文学等の点が悪く、知識が孤立化していること、専門の教師の不足、実験室の不足等が裏付けられるからだが、学生自身の口からも、「ブラジル学生は物事に興味を持たず、考えようともしない」といった声も。
教師養成のための投資が必要との声は多いが、教師職に魅力を感じず、専門家は国外流出。専門的な知識がなく、実験もしない教師の授業は興味が湧かず、関連性のない知識の寄せ集めでは知識も定着しないという悪循環。上級教育への投資も大切だが、幼、初等教育の活性化が待たれる。