ニッケイ新聞 2007年12月1日付け
金融暫定税(小切手税)の期限延期で業を煮やしたルーラ大統領は二十九日、同案に反対するのは脱税の常習者だと糾弾したことを三十日付けエスタード・デ・サンパウロ紙が報じた。「口では税が多過ぎると嘆きながら、実は脱税を見破られるのが怖いのだ」とあばき、違法行為だと食い下がるDEM(民主党)へ宣戦を布告した。「DEMは五百年、ブラジルを統治しながらPT(労働者党)が成し遂げただけのことは、できなかった」とこき下ろした。
脱税者呼ばりをされたDEMも、反論した。マイアDEM党首は「大統領は悪質なウソつきだ。野党を悪役に仕立て、自分は政権の場を温存する切り札をまもる策略だ」と反ばくした。「長期展望のない者たちに政権を預けることはできないから、小切手税も預けられない」という。
大統領が小切手税に執着するのは、制限も管理もなく政府が下らない目的に経費の垂れ流しをしたいからだ。大統領がいう未来とは、国民が決めるものであって大統領ではない。未来永劫に政権の座にあると思うのは、慢心であるとDEMは声明を発表した。
小切手税反対者を脱税者呼ばりするのは、連立与党内でも言い過ぎだと批判が多い。小切手税は、低所得者の生活扶助金や農村労働者の年金、医療補助に使われると強調した。二〇〇八年は、小切手税の税収を四百億レアルと見積もる貴重な財源でもある。
マンテガ財務相は小切手税が否決された場合、重加算税や社会プロジェクトの予算カット、医療や教育部門の近代化保留をほのめかしている。来年度予算案は、小切手税の税収四百億レアルの可否にかかり予算審議の仕様もない。
予算案から見るなら、小切手税あってのブラジルといえそうだ。小切手税を失ったブラジルは、PAC(経済活性化政策)もオシャカになる。これは、PT政権の正念場らしい。小切手税の表決をカリェイロ上院議長の議員権はく奪表決を行う十二月四日前に行うと、思考力が混乱しているから二日後の六日にする案も出ている。