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伯亜貿易、ドル決済廃止か=両国共同体制を打診=「クリスチナ節」披れきに食傷=マクロ経済政策調整が前提

ニッケイ新聞 2007年11月22日付け

 伯亜経済の共同体制案打診でクリスチナ・キルチネル次期亜大統領は十九日、訪伯した。ルーラ大統領との会談で先ず、両国の貿易で共通通貨であるドル通貨の廃止を、次期亜大統領が提案した。同案は合意が得られれば、二〇〇八年から実施とガルシア大統領特別補佐官が明らかにした。また両国の首脳会談は年二回定期的に開催され、メルコスル共同市場強化のため共同歩調を採ることを打ち合わせる。その第一回は来年二月、ブエノス・アイレスで行われ、両国共同体制の第一歩を踏み出すというもの。
 伯亜両国が共通通貨の採用へ踏み切ると、為替手続きが簡略化されコスト削減につながり輸出入手続きも容易となるので、従来の通商概念から脱皮することになる。しかし、ドル通貨の廃止には問題もある。両国の貿易決済に、数々の不都合が生じることだ。
 ルーラ大統領は、両国の貿易収支でブラジルが出超体質であるため、均衡を図るよう懸念していた。ブラジルは二〇〇六年、対亜輸出が一一七億ドルに対し輸入が八〇億ドルであった。最近はレアル通貨が高騰したため亜国に有利となっているが、亜国の輸出態勢が万全ではない。
 亜次期大統領はエネルギー問題に触れ、ペトロブラスがボリビアのガス開発にてこ入れをしたことで、ついでに亜国のガラビ水力発電所へも投資をとの注文だ。さらに亜国は、ブラジルの核開発とウラン濃縮で国際世論を説得するため協力するというのだ。
 ルーラ大統領は、ペトロブラスとEnarsa亜石油公団の合弁に留めることを提示した。共同体制で伯亜蜜月時代を形成するのは、ウルグアイとパラグアイを袖にするようなものだと敬遠。親密な伯亜外交関係が南米の発展につながるもので、共同体制案は姑息な小細工であると、大統領が丁重に断った。
 業界関係者は、ドル通貨廃止論を気休めと見ている。同論は、サルネイ元大統領の時代にも話題になった。伯亜共通通貨に、ガウショという名称までついた。ユーロを真似て、メルコスル共同通貨案も出た。メルコスル中央銀行もないのに、幼稚な発想であると廃案になった。
 共通通貨が生まれるには、数十年の長い年月を経ている。その準備時代も含めれば、一朝一夕に共通通貨は生まれないというのが常識だ。伯亜両国はマクロ経済政策の調整が、先決という見方が多い。中銀は泥縄式のドル廃止に向けた細部調整に大童らしいが、両国の貿易は軌道に乗るまで大混乱を来たすのに違いない。