ニッケイ新聞 2007年11月17日付け
日本のサッカープロリーグJ2の京都サンガFCは十四日、山形・羽黒高等学校のブラジル人留学生、ウィリアム・ピニェイロ・ロドリゲス選手(18)の加入が内定したと発表した。同校への留学生で日本のプロチームへ入るのは二人目となる。
リオデジャネイロ州出身のウィリアム選手は二〇〇二年から〇五年までジーコサッカーセンター(CFZ)に、〇五年から羽黒高校のサッカー部にそれぞれ所属。また、〇六、〇七年には仙台カップ国際ユースサッカー大会で東北選抜メンバーに選出されている。
プレースタイルは足が速く、シュートの正確性に優れ、中盤からの精力的な守備もこなすミッドフィルダー。ウィリアム選手は同サイトに「サンガというチームのために、自分の持てる力すべてを出して一生懸命頑張っていきたいと思いますので、ご声援よろしくお願いします」とコメントを寄せた。
同校のブラジル人留学生では、これまで、百九十センチを超えるドグラス選手(現在ニューウェーブ北九州社会人クラブ所属)がモンテディオ山形(J2)にテスト生として参加したことはあるがプロ契約には至らなかった。その他にはマーロン選手(Jチームの仙台・磐田の練習に参加経験有り)が現在ザスパ草津の一員として活躍している。
羽黒高校と国際交流を行ってきている国井精さん(山形県人会副会長)は、十四日夜に羽黒高校の関係者から、十四日(日本時間)に京都から関係者が同校に来て入団契約を行い、入団発表したことを電話で聞いたという。「自分がお世話した選手が、プロ契約できたことに喜んでいる」と弾んだ声で話した。
今回はブラジル人留学生の中で、二人目のプロ契約に至ったウィリアム選手。国井さんは「親がすごく貧しくてね。でも、すごく根性のある選手だった」と振り返り、「これかも日伯交流の活性化に向けて、国際交流を続けていきたい」と語った。
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ブラジルから羽黒高校への留学は、野球から始まった。
九九年、宮崎・日章学園でのブラジル人選手の活躍を目にした当時の校長が、ブラジルでの選手発掘を決断。福原義幸教頭(現校長)が担当となったが、ブラジルのことについてほとんど知らなかったことから、唯一の手がかりだった高野書店に電話した。
店主の故・高野泰久さんに教えられ、山形県人会へと連絡。当時の理事の中で野球を知っているのは国井さんだけだったために、国井さんが個人的に世話をすることになったという。
国井さんは福原教頭を飛行場まで迎えに行き、五日間ほどで高野書店ほか、ブラジル野球連盟、パウリスタ野球連盟、ヤクルトアカデミーなどの関係団体を見学した。野球のことは素人とのことで監督を連れて来伯することを約束して、一時帰国。約一カ月後に同校野球部の横田謙人監督らと再来伯し、その時に第一号として吉田健二、ルイス・エンリケ・チノ両選手の来日手続を行った。
その後も年に二選手が留学して徐々に成績が向上。父兄から「なぜ野球だけに」との声があり、〇一年にブラジルからジェロニモコーチを呼び寄せた。
同コーチが元日本代表監督のジーコと現役時代一緒にサッカーをしていた縁で、ジーコサッカーセンターから留学生を受け入れることになった。毎年二人ずつが同校に留学しており、今年で十三人になる。