ニッケイ新聞 2007年11月17日付け
イスラム支配下のイベリア半島をキリスト教徒の手に奪回した「レコンキスタ」の主役はスペインだが、20世紀の最大事はフランコ将軍が率いる専制独裁国家であり、スペイン内乱だった。32歳の若さで少将になったフランコは人民戦線に反対し内戦に―。世界の知識人らは猛反発し、「老人と海」のヘミングウエ―も戦場に駆けつけ銃を手にして闘う▼中南米での「血の征服」は有名だし、今もフランコ非難は多いけれども、スペインは強く逞しい。その国のフアン・カルロス国王が、チャベス大統領に「黙れ」と怒鳴りつけたそうだ。今や「新しい社会主義」を標榜しベネズエラを導くチャベス氏は、元陸軍中佐のエリ―トながら極めて口が良くない。国連総会でブッシュ大統領を「悪魔」と呼び批判されるなど、その悪口雑言ぶりは常軌を逸している▼まあ―これは国王の「黙れ」が正しい。チャベス氏は、国王を面前にしてアスナール前首相を「フアッシスタ」と批判し続けるのでカルロス1世の怒りが爆発したらしい。こうした騒ぎのために中南米首脳会議が混迷したが、ここは新社会主義の主唱者が「詫び」をするのが礼儀だろうが、なかなかどうしてチャベス氏も強い。「黙れ」発言は聞こえなかった―とし「わたしは、真実を言ったまでだ」と記者団に語ったそうだから、これはこれでご立派としか申しようがない▼病床のカストロ議長を敬い、モラレス大統領と親しく、イランの大統領とも近いけれども、米欧の市民らはほとんどが「チャベス大嫌い」の世論調査もある。暴言と悪罵もいいけれど―ほどほどにとお願い愛したい。 (遯)