ニッケイ新聞 2007年11月09日付け
静岡県焼津市で昨年十二月、ブラジル人母子三人が殺害された事件で、殺人容疑で国際手配されているブラジル人、エジルソン・ドニゼッチ・ネベス(Edilson Donizeti Neves)容疑者について、日本政府の要請によるブラジル政府の捜査当局が三件目の代理処罰(国外犯処罰)の手続きに入った。八日付けの時事通信、共同通信、NHKなど日本の各メディアが報じている。
共同通信では、「ポルトガル語に翻訳された捜査書類が外交ルートを通じてブラジルの捜査当局に送付されたと見られる」と報じた。
これに関して八日、同事件担当のユリカ・タニオ・オクムラサンパウロ州検事正にニッケイ新聞が電話取材したところ、「まだ日本からの捜査書類は届いていない」と否定している。
一方、在ブラジル日本国大使館にも確認を求めたところ、「日本政府がブラジル政府に対してどのように手続きを進めているかは現段階で話せない」との説明で、捜査資料がブラジル内のどの機関に渡っているか特定することはできなかった。
その理由については「詳細な情報提供はネベス容疑者の再逃亡などにつながる恐れがあるので難しい」との見解を示した。
また、日本で犯罪に関わったとされ帰伯したブラジル国籍者が九十人以上にのぼっている点については、「両国政府がこの現状を放置できない認識で一致している。今後とも両国で前向きに調整していくはず」とコメントを寄せた。
ネベス容疑者は昨年十二月、当時交際していたブラジル国籍の女性派遣社員、ソニア・アパレシーダ・ミサキ・フェレイラ・サンパイオさん(41)宅で、ミサキさんとその次男を殺害、自宅で長男を殺害した疑い。
同容疑者は事件発覚直前にブラジルに帰国。現在もブラジル内で行方をくらましているとみられる。サンパウロ州バストス市出身で、焼津市内で貸金業などに関わっていたとされる。
二〇〇五年に湖西市で起きたデカセギブラジル人女性との交通事故で娘一人を亡くした山岡理恵さん(NPO法人・国外逃亡犯罪被害者をサポートする会理事長)は、八日付け静岡新聞に、「殺人という事件の大きさや遺族の思いを考えると、代理処罰は妥当な選択。これを受けてブラジル当局も犯人の身柄確保に向けて動き始める可能性もあるので期待したい。一刻も早く犯人を捕まえてもらいたい」とコメントを寄せている。