ニッケイ新聞 2007年11月08日付け
何か事が起こった時に選択肢が一つしかないということは、対処の幅を狭める。サンパウロ州とリオ州で天然ガスの供給カットが起きて以来クローズアップされたエネルギー問題は、安定成長を望む産業界を不安に陥れたが、七日付エスタード紙には、いくつかの企業がエネルギー源の転換、複数化を検討、あるいはプロジェクトの加速化を決めたことが報じられた。
たとえば、チリで同様の問題に直面したレクサン(アルミ缶メーカー)では「事業継続を保証するためには偶発的な問題にも対処できる準備が必要」とし、「必要に応じてエネルギー源を転換できる状態にもっていく」という構想で、先の二州の工場でのGLP(石油精製段階で発生するガスを液化した燃料)使用準備をすすめている。
また、先週のガス供給カットでほぼ二四時間ガスが止まり、ポリエチレンだけで一五〇トンの生産停止となったバイエル社では、予定していたエネルギー転換プロジェクトを加速化することを決めた。その他、タイヤメーカーのミシェリンなども対応策を検討し始めたという。
もちろん、このようなエネルギーの転換は全業種に可能な訳ではなく、ガラスや陶器など、転換困難な業種もある。また、九〇年代に廉価で環境にやさしいという売り込みで天然ガス用施設に総転換した中小企業や、天然ガス車を利用している人たち(リオ市では二三・七%)には、先行き不安は大きい。
天然ガスの将来を見ることなく薦める人たちに同意し天然ガス車を購入した人たちは被害者とも言えるが、Flex化を進めようとする企業からもエネルギー転換のための研究開発費の補助をと言う声があるなど、政府に働きかけるべきことも残されている。
二日付フォーリャ紙の、「ブラジルではこれまでにエネルギー政策なるものが確立されたためしがなかったことが問題だ」という石油研究所、車両用液化ガス委員会のフェルナンド氏の言葉が重い。