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ガス供給は戻れども…=露呈された基盤の弱さ

ニッケイ新聞 2007年11月02日付け

 給油ならぬ給ガスができず列になった車や操業停止の工場。三十日のリオ市のガス供給停止は、三十一日朝早くペトロブラス(以下PB)側に通達された暫定令によって解決したが、今回の問題は天然ガスだけに限った一時的なものではないことが改めて明らかにされた。
 表面的には司法当局の介入によって回復したガスの供給カットだが、この問題がPBとの契約量以上の供給を受けていたガス業者との問題と、電力料金の設定を崩さないための国家電力庁(Aneel)との協定に基づく発電所への天然ガス供給との両面から起きていることを昨日記した。が、この問題は単に天然ガスの問題ではなく、ブラジルエネルギー対策の問題であり、隣国ボリビアとの問題であり、温暖化が進む地球規模の問題でもある。
 一日付フォーリャ紙によれば、同様のガス供給カットは二〇〇一年にも起きているのだが、ボリビアとの間でのガス供給の問題が生じてからはエネルギーの不足が起きる場合に一番先に問題になるであろう資源が天然ガスであったという。安定したエネルギーの供給は国民の安定生活や企業の生産性保証、国の発展の大前提ともいえるわけだが、ペトロブラス総裁が「短期的な天然ガス需要の拡大には対応しきれない」というように、限りある資源を利用していることと、雨量に左右される電力システムの弱さが現れた形である。
 もちろん、今回の件がそのまま、国を挙げての電力危機につながるわけではなく、夏になって貯水池の水量が確保されればガスの供給の不安はないとするが、エネルギー供給問題の切迫度は地域差もあり、ガスの利用に大きく依存するガラス、製鉄業界などにとってはその不足は深刻である。
 ただ、今回の供給カットでリオ市は大きな混乱が生じ、サンパウロ州では余り表面化しなかったことには地域差だけではない理由がある。サンパウロ州のガス業者は、PBから供給を減らす旨通達を受けてからの二十日間に、大手企業に重油による代替策を示唆し、企業もそれを承知した。ところが、リオのガス業者はこれといった対策もとらず、企業に通達もしていなかった。この差が混乱の大きさにもつながったが、リオ州では司法当局に即座に働きかけ、供給量を回復させた。それでも損害は一九〇〇万レアルから二〇〇〇万レアルという。サンパウロ州に関しては、PB側が天然ガスと重油との差額を払うというが、供給量回復交渉はいま少し様子を見てからのことになりそうだ。
 では、将来的にはどうするか。先のPB総裁の言葉ではないが、根本対策はすぐにはない。早急対策としては液化ガスの輸入や新しいガス田の開発が考えられるが、最初の液化ガス輸入船は来年五月にしか入港せず、新ガス田からのガスは二〇〇九年からしか供給できないという。マデイラ川の水力発電所の競売入札は十二月に先送りされている中、ボリビアがPBの復帰を保証したというエスタード紙の記事が一条の光かも知れない。ただ、天然ガスに変わり重油を使用した場合の温暖化ガス排出量は増加することを案ずる声も聞こえている。