ニッケイ新聞 2007年10月30日付け
十月十五日に奴隷労働の摘発再開が承認されてから二週間。二十九日付のフォーリャ紙が、摘発再開で、劣悪な労働条件下で奴隷のように働かされ、逃げ出すこともできずに苦しんでいた人々九〇人が保護されたと報道。コーヒー園やファゼンダに配耕された移民の方々の苦労を思い出させるような実態が今も続いている。
今回摘発されたのは、パラー(PA)、マット・グロッソ(MT)、マラニョン(MA)の各州。法律顧問や警官からなる査察官たちは、グループ毎に脱出者たちから告発のあったファゼンダにむかう。
PA州都ベレンから四八七キロのノヴォ・レパルチメントにあるファゼンダ、セーラ・ドウラーダで保護された労働者は二三人。木の枝を組立て粗布で覆っただけの、壁すらない小屋で寝泊りしていた労働者は、飲用水もなく劣悪な衛生状態という環境下、主人が持つ食料品店での借金にあえぎながらこき使われていた。また、そこから五〇キロの地点でも、掘建て小屋に住んでいた開墾労働者と料理人が保護された。
MAのサンタ・ルジアでは、四五人(うち四人は一三歳から一七歳)を保護。飲用水もなく、食うや食わずの重労働。衛生状態も住環境も最悪だった。ここでも、監督官により仕事を割当てられた労働者たちは、食事や長靴、帽子、種まき用の機械といった必需品まで水増し請求され、借金に苦しんでいた。
MTではクイアバ市から七九六キロのファゼンダ・ボア・ソルテで、二〇人を保護。三カ月間、動物のえさや農薬、機械などの置かれたベランダのような場所で寝泊りさせられていたという労働者たちだが、宿泊所にはトイレすらなかった。監督者は銃の不法所持で逮捕され、五丁の銃器も押収された。
パラー、MA両州で保護された人々は、各々の出身地に送り返されるとともに、失業保険の適用を受け、受取っていなかった給与と賠償金として約一二万レアルを、MGで保護された人々は未払い給与の約九万レアルを受取った。
劣悪な労働条件や住環境、借金がかさんでいく生活に見られるような奴隷労働は、一九九五年来、取締りが行われてきた。しかし、今年七月にパラー州パグリナで一〇六四人が奴隷労働の被害者とされた後、雇用者側の要請を受けて作られた上議八人による委員会の介入により、二二日間中断。政治家と雇用者の癒着が問題視されるが、取締り担当官らは、摘発の材料となる告発が少なく、実態の解明や摘発に至るまでのプロセスの加速化が必要であるとしている。