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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年10月30日付け


 移民史料館が揺れているようだ。運営をどうするかの議論があったらしく、館長が辞任するとかの話だそうだけれども、この問題を史料館幹部の出処進退で済ませるのは誤りではないか。元々、史料館は故斎藤広志氏の提唱を受けて移民70周年に文化センタ―が増築したとき完成したものだが、あの頃から「金食い虫」になるの見通しが強く、それを見込んでの笹川基金もあった▼博物館や美術館、あるいは歴史資料館というのは、先ず何処も「赤字」が決まりと見ていい。日本の「東京国立博物館」もだし、かなり人気がある「江戸東京博物館」も巨額の赤字であり、政府や東京都が穴埋めしているのが哀しいけれども現実なのである。これは国際的にも通じるのであって「黒字経営」は、あるにしても真に少ない▼博物館などの仕事は、常設展示や企画展が主になるけれども、もっと大切なのは展示物の歴史的な意義や価値と評価などを含めた文化と社会的な背景の研究といった極めて地味な仕事なのである。これは一般には目立ないが、史料館が存在する意味も―ここにある。しかし―。文化協会の歴代会長らは、この重要さに目を瞑り、あの笹川基金までも使ってしまったと耳にする▼史料館がやるべき本来の仕事は、収集した資料の整理や移民との関係、日本移民史の研究をも含むような幅が広く深い。ところが、これは進んではいないようだし、畏敬する先輩・S氏ではないが「死霊館」になっている。今年の企画・大武和三郎展はよかったし、史料館の抜本的な見直しがないと、本当の「死霊館」になる恐れすらある。 (遯)