老後と年金を考える

ニッケイ新聞 2007年10月17日付け

 現在四〇歳の男性が定年になる二五年後、現行の社会保障システムはブラジル人の高齢化と少子化により破綻するとコンピューターが計算したという。時間はまだ二五年あるから、社会保障システムに頼らなくても老後を生きていける方法を探したほうがよい。
 これは、神様がノアに告げたという箱舟の話に似ている。老後の生活を安楽に過ごす箱舟とは、どうつくるのか。ノアが、住んでいた地方は砂漠であった。それなのに大雨が降ると、神様が予報をしたという。
 ノアの子らは、川もない砂漠で箱舟を造るよりゴルフ場かヒットネス・クラブを造るほうが儲かると提案したに違いない。この寓話は、老後の生活について行動を起こす信念と勇気を教えているらしい。この教えを裏返すなら、近づく変化が見えない人は後悔すると教えている。
 変化とは、今回の金融危機で年金ファウンド(フンド・デ・ペンソン)が軒並み被害を被ったことだ。ブラジルでも金融市場の大口債権者は、銀行ではなく年金ファウンドである。自分の属する年金ファウンドは、安泰かどうか確かめただろうか。
 ブラジルも程度の差こそあれ、ベビーブーマーの定年期を迎え同じ傾向がある。平均年齢の高齢化と少子化の影響で年金制度の収支バランスが崩れる。現行の年金制度が安泰なのは、二〇一〇年まで。あとは問題を先送りしているだけ。
 金融危機とは、奇怪なもの。危険性の警鐘は、何度も聞いた。必ず来ることも、分かっていた。偶然に来たのではなく、来るべくして来たのだ。そして年金ファウンドが襲われたのだ。