ニッケイ新聞 2007年10月11日付け
砂糖と醤油で煮た玉コンニャクを串に刺す大会が開かれたの記事(9日)は楽しくも微笑ましい。山形は、こんやく消費が日本一だし、確か―玉コンニャクの発明も山形の人だったらしい。こんにゃくがよく食膳にのぼるのは美味によるところが大きいのだろし、やれ「砂だし」にとよく食べる。漢字で書くと蒟蒻と難しいが、これほど日本人の舌に馴染んだ食べ物も少ないのではないか▼インドかセイロンが原産地だそうだが、日本でも1000年も昔にもう食べていた。江戸の末期になると、茨城県の中島藤右衛門という人が、粉こんにやくの製法を考え出して藩主から名字帯刀と麻裃の着用を許されたの話が今に伝わる。こんにゃくの生芋は重く、腐敗するのも早い。藤右衛門さんは、これをなんとかしたいと、苦心の末に粉にする研究を進め成功したのだが、これで販路が拡大し村は大いに富み潤ったという▼秋が深まると、山形では芋煮会が有名になる。正しい調理法はしらないけれども、畠から掘り出したばかりの大きい里芋と牛肉を入れ鍋で煮る。あそこには名代の米沢牛がいるし、あるいは山々に豊かな茸などの香気が味覚を増すのではないか。大きな芋煮になると、東京からフアンが駆けつける人気だし、夏にはサクランボもある▼隣の宮城は、意外に知られていないのだが、蒲鉾の消費量が日本一である。ここには「笹蒲鉾」の名品があり、全国平均の4倍もの1万2661円を「かまぼこ代」に使う。酒の肴によく、食卓にと毎日のように海の味を楽しむ。と、鄙びた奥羽の人々も中々に味道を心得た食道楽が多いのがいい。 (遯)