ニッケイ新聞 2007年10月5日付け
世界の殺人事件の1%がサンパウロ市で起きているという国連年次報告は衝撃的だった――と水曜付けの樹海に書いた。ところが翌日のエスタード通信には、その根拠となっている統計は九九年の古いもの(一〇万人あたり五二・六人)で、〇六年現在では遙かに低い(同一八人)という記事が出た▼〇一年の南米諸国平均が同二五人だから、今のサンパウロ市の方が〃安全〃だ。ただし、〇一年のNYが同七人、欧州全体平均が同八人だったのに比べれば、それでも多い▼これを指摘するNGO団体Viva Brasilによれば、国連の報告は、何かにつけ張り合うことの多い亜国の「La Nacion」紙記事の数字がベースになっているとし、不用意な発表に注意を喚起した。加えて、この六年間でサンパウロ市の殺人件数が六五%も減少したのは、「効果的な警官の配置の工夫」と論じた▼これを読んでピンときた。日本の交番制度の移植だ。本日の第二コロニア社会面にあるように、先日、サンパウロ州軍警のコミュニティ警察活動十周年が祝われた。北米の地域警察をモデルに九七年に始まり、〇〇年からは日本の交番制度の移植が始まった▼〇五年六月一〇日付けエスタード紙によれば、九六年には同一二三人と世界最悪を誇ったサンパウロ市ジャルジン・アンジェラ区が〇一年に交番制度を導入、〇四年には同六四人にまで減少した。当時、アウキミン州知事自らが「日本の警察指導のおかげ」と讃えていた。もちろん日本だけの手柄ではなく、軍警の取り組みの成果だ▼国連の報告のあとにはこのような日本の貢献があり、改善してきていると思えば、それほど悪い数字ではないかもしれない。(深)