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なぞの河童、大道芸人登場!?=訪れた国は50カ国以上

ニッケイ新聞 2007年9月29日付け

 サンパウロ市のあちこちのイベントで「あの河童は誰だ?」との声が聞かれる。「日本の伝統芸能を伝えたい」――。そう語るのは河童のような髪型をした大道芸人の、老門一郎さん(39、東京都出身)だ。
 「興味が惹かれるならどこへでも行く」との言葉の通り老門さんは、自分の芸を披露しながら日本国内はもちろん、アジアやヨーロッパ、北米など五十カ国以上を訪れた経験を持つ。
 ほとんど所持金を持たずに、行く先々で公演やアルバイトなどを行いながらその日の資金を集めている。
 母親の影響で、小さい頃からお祭り好きで十歳頃から郷土芸能を始めた。「始めたころは高いところで演じるのが怖かった」と当時を振り返りつつ、「子ども心に自分が盛上げるごとに大人たちが喜ぶのが嬉しかった」と感想を語った。
 今回はアメリカから中米を目指して南下してきた。当初コロンビア辺りで引き返す計画をしていたが、コロンビアの日系移住地で出会った人たちに感銘を受けたので、パラグアイやブラジルの日系移住地を見たくなって訪れた。
 初来伯の感想を訪ねてみると、「もっと音楽やサッカーなどが溢れていると思っていたが全然違う」と驚きを隠せない様子だった。
 老門さんは「日系社会で感じたのは〃昔は苦労した〃という話が多く、未来の話がない」と懸念する。一方で、「古典の継承や伝承をきっちり行っているのには驚いた」と率直な感想をもらす。
 「時代に合わせて芸能が柔軟に変化することは必要なことだが、変化するに伴ってその芸能自体の芯まで変えてしまうと先には進むことはできない。昔を振り返るのが悪いことではないが、生きた日本も試して欲しい。相手の中の日本を作り上げたい」などと熱い思いを吐露した。
 「距離の問題もあって、日本とブラジルでは関わりが少なすぎる」と現状を話し、「他の人たちの道を作ることができれば」と意気込んでいた。
 最後に、「これからも日系社会に呼んでもらえるならば、ぜひまた来て演じてみたい」と締め括った。