ニッケイ新聞 2007年9月26日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙八月二十五日】日本訪問から帰国したルイス・F・フルラン前産業開発相は、米国発金融危機が世界を襲ったのに、日本の産業界にはどこ吹く風と活気がみなぎっている、なぜブラジルだけが意気消沈しているのかと憤慨した。
貿易黒字が下降気味など、悲観する理由にならない。コモディテイが弱気だというが、いままでが過去の平均よりも高すぎたのだ。同氏はサジア食品の筆頭株主であり、今回エタノール関連のグリーン・ファンドを創立した。
ブラジルが金融危機を憂慮する理由は全くないと同氏は喝破する。ブラジルは、もっと視野を広く長期計画で物事を考えるべきである。ブラジルは海底の油田開発やバイオ、フレックス燃料で先行投資を行い、エネルギー面では世界の先端を行く。
ブラジルの不動産ローンは、健全である。建材もゼネコンも妥当な線で好調である。ブラジルの産業で、輸入に頼るものはない。対米輸出は以前の二五%から一五%に落ち込んだが、全体には影響がない。金融危機の影響を最も受けるのは、中国と思われる。
中国は大きく対米輸出に依存していた。しかし、米国が落ち込んだ分を日本やEUが穴埋めしている。世界は米国だけではない。ブラジルは前世紀に米市場に依存していた時代の頭の切り替えができないのだ。時代は変わった。
金融危機がこれから何を引き起こすか誰も予測できない。もちろん不況のための準備は必要である。しかしパニックには、理性と衝動の両面がある。だから衝動だけでものを観察して、騒ぐのは間違いだ。
ブラジルの銀行は、多少の怪我はあっても、動揺はしていない。既に銀行群は資金を集め、記録的営業益を上げている。銀行ばかりでなく、工業もソコソコの利益を上げた。
とかく人間は、目先の損得で動き安い。統計は五年以上の動きで読むべきである。市場は過熱気味であったことが分かる。日欧米の再生可能燃料の需要が上昇し続けるなら、ブラジルには順風が吹く。燃料需要は、アグリビジネスをも引き上げるからだ。
世界的不況により前年度比三〇%増を見込んでいた輸出業者は、一五%程度の落ち込みを覚悟する必要がある。それでも世界平均の一〇%増よりマシだ。世界平均の上を保てれば、まずずはよい。大豆や牛肉はその限りにあらず。驚異的な成果を見ることになる。
工業製品は、為替の影響を受けるので国内と国外の両方で見ること。自動車と部品は輸出で落ち込むが、国内で取り返す見込み。電子機器は輸入部品が割安となったが、完成品は国際競争で苦戦する。
為替は変動制が原則であるため、ヘッジなどで防衛しながら早く慣れることだ。これから有望とされるのは、インスタント・コーヒーや乳製品、金属製品、宇宙産業などのサービス部門である。国際競争力を高めるため港湾や空港、鉄道など物流施設の共同管理と合理化が急務である。
その他改善すべき点は、期待した経済活性化計画(PAC)が煩雑な手続きで思わしい進展を見せていないこと。予算計画と公約も遅々としているので、改善の必要がある。