ニッケイ新聞 2007年9月25日付け
【西日本新聞】ブラジルのクラシックとポピュラーの両面で、多大なる貢献をした、国民的音楽家、ラダメス・ニャタリの作品集が出版された。ラダメスは、一九四〇年代には、当時ブラジルではメジャーだったコンチネンタルレコードの専属アレンジャーで、革新的なオーケストラを率いて、ラジオ番組の音楽を多数手掛けていた。リオのナイトクラブでピアノを演奏していた無名のアントニオ・カルロス・ジョビン(トン・ジョビン)をスカウト。アシスタントとして、譜面写しをさせていたそうだ。
まるで息子のように接し、それまで独学だったジョビンの先生的存在にもなった。ジョビンの才能をいち早く見抜き、ジョビン初期の「リオデジャネイロ交響曲」のアレンジも引き受けている。
晩年には、お互いに曲をささげ合う仲でもあり、この師弟関係がなければ、ボサノバは生まれなかったかもしれないと、容易に推測される。一聴すると、イタリアのサントラ「チネジャズ」のようでもあるし、イージ・リスニングのようでもある。ため息が出るほど、豊潤で完成度の高いミックスチャーな音楽。ブラジルでしか存在しえない。