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パンタナール〃損傷〃大きい=「エコツリズム」に異論=日伯の地理学専門家チーム

ニッケイ新聞 2007年9月20日付け

 パンタナールは自然の宝庫といいますが、悠長にしていられるほどダメージは少なくない――。日本とブラジルの地理学専門家が集い、長期の南パンタナール研究が続けられている。「自然を保全しながら開発を進めるのに、パンタネイロが所有する伝統的な知恵が活かされる」と、研究代表の丸山浩明立教大学文学部教授(ラテンアメリカ研究所所長)。八月二十七日から今月五日にかけて実地調査が行われ、近い将来には、これまでの結果を踏まえた著書を発表したいとしている。
 同研究は、二〇〇一年から三回にわたり文部科学省科学研究費補助金を得て続けられてきており、今年が七年目。二〇一〇年までの予定で、丸山さんのほか各専門分野から、宮岡邦任さん(三重大学教育学部准教授、水専門)、吉田圭一郎さん(横浜国立大学教育人間科学部准教授、植生専門)、仁平尊明さん(筑波大学大学院講師、エコツリズム専門)、小島アナさん(MS連邦大学、牧畜専門)が参加している。
 セラード開発に伴う土砂の流入、森林伐採、山火事など、パンタナールの環境破壊につながる要因は多々ある。「野鳥観察や釣りなどエコツリズムといっても、自然社会に与える影響は大きい」と仁平さん。
 丸山さんは「都市的な開発をパンタナールに持ち込んでもパンタネイロが苦しむだけ」と牧場を拠点に行うエコツリズムには限界があるとし、長い伝統の中で培われてきた放牧のやり方や生活方式など「伝統的な知恵の、賢明な利用(wise use)」を訴えた。
 研究成果は、パンタナールの子供らに伝統的な姿を伝られるよう、同地での教育に活かされれば望ましい」と抱負を語った。