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リオ=軍警ら52人を逮捕=麻薬密売組織と癒着=手入れの日の情報漏洩=続くとかげの尻尾きり

ニッケイ新聞 2007年9月19日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】リオデジャネイロ州市警は十七日、ドゥッケ・デ・カシアス市の軍警第一五管区が麻薬密売組織と癒着していたとして、幹部職員と警官の五十二人を逮捕した。市警は二〇〇七年当初、組織からメモ帳を押収し、同管区が組織の拠点となっていたことを内偵していた。メモ帳によれば、一女性が組織と同管区の間に介在し、職員へ毎週定期的にリベートを配布したり、留置中の容疑者釈放、手入れの執行日を漏洩させたりしていた。州政府は麻薬密売組織への対応で、陸軍治安部隊の支援を要請するようだ。
 リオ州政府のベウトラメ保安長官は、逮捕した幹部職員と軍警が担当した地域に治安部隊を配置する意向を表明した。裁判所が逮捕を命じたのは五十九人、七人は逃走中。同管区に勤務する職員六一七人のうち一〇%が、犯罪に関与したらしい。
 同州検察局によれば、逮捕された幹部職員の中に高官がいないことは、捜査未了を意味するという。病根を切除しないと、すぐに再発する。第一五管区の中にマフィアが存在すると、検察局はみている。
 逮捕された職員の担当地域は、同市インバリエー区にあるアンジェリカとサンタルッシアのスラム街。当局は看過や情報漏洩ばかりでなく、手入れを逃れる術をも指導していた。
 盗聴記録によれば、同管区の軍警が犯罪組織に、新教系のキリスト教会牧師を訪ね、同管区内偵の指揮を採るマセード中佐の部署移転を促す署名運動を展開するよう指示していた。
 ドゥッケ・デ・カシアス第一五管区には、血生臭い歴史がある。〇五年三月三十日、軍警八人が身元不明の二人を殺害し、犠牲者の生首を警察署の塀にさらして逮捕された。同管区の綱紀粛正を宣言したロッペス中佐の左遷を画策し、失敗した報復だとされる。
 生首事件の翌日、同州ノーヴァ・イグアスとケイマードスの二郡で二十九人がリンチされる事件が発生。理由は当局による問答無用の手法に抗議するというもの。犠牲者は、当局と組織に無関係な青少年がいけにえにされている。
 リオ州は〇六年、軍警一万八〇〇人が犯罪組織への関与で取り調べを受け、解雇処分を受けたのは二〇五人のみで、大部分が訓戒処分で終わった。二〇〇七年は五三八一人が取り調べを受け、解雇は一六一人。身柄拘束中は三四八人。
 リオ州では軍警が薄給のために内職をするのは、歴史的伝統とされる。夫が組織からリベートをもらうか、妻がプログラムをするかである。軍警の綱紀粛正には、見せしめ的懲罰しか行われていない。保安長官は、昇給で悪癖を矯正できないという見方だ。
 治安関係軍属協会のコルデイロ会長は、リオ州治安当局の対処を批判した。当局から嫌疑をかけられた雑兵級軍警の基本的人権は、虫ケラ同様という。治安当局を根城とする泥棒に加担するのではないが、誰にも生きる権利はあるという。