ニッケイ新聞 2007年9月18日付け
日本の国会図書館では「近代デジタルライブラリー」として、同館所蔵の書籍をデジタル化して公開する事業を行っている。所蔵図書を写真画像の形で処理、ホームページ上(http://www.ndl.go.jp/)で公開するもので、現時点で約十四万冊の閲覧が可能。中には第一回移民船笠戸丸の乗船名簿をはじめ、南米、ブラジル移民に関する資料もあり興味深い。七月からは大正時代の書籍を追加。初期移民が入った耕地や植民地、生活の様子を紹介した「ブラジル移植民地写真帖」(海外興業株式会社)も含まれている。
「近代デジタルライブラリー」は、国会図書館のサイト上に設置されており、キーワードを入力して検索する仕組み。二〇〇二年十月に始まったもので、資料の閲覧のほか、保存も可能になっている。
著作権保護期間の満了が確認された資料など、明治時代の書籍に加え、今月から大正時代の図書一万五千七百冊が公開されており、現在の総点数は十四万三千冊に上る。
ブラジル移民に関するものとしては、皇国殖民合資会社による笠戸丸移民名簿(一九〇八、書籍名は「伯剌西爾行移民名簿」)や、外務省通商局が南北アメリカ、ブラジルなど各国の移民事情を調査した「移民調査報告第一回―七回」(一九〇八―一一)など、初期のブラジル移民に関するまつわる資料。同じく外務省が一八九五年にまとめた「南米伯刺西爾・中米尼加拉瓦・瓦地馬拉・西印度ゴアデロプ探検報告」といった移民開始前のものもある。
さらに七月から公開された大正時代の書籍の中には、一九二二、二四年に海外興業が発行した「ブラジル移植民地写真帖」も公開。サンパウロ、リオ市やイグアペ、リベイロン・プレットなど、サンパウロ州内の植民地などを紹介しており、「サンパウロ州は農業者の天国です」と記すなど、ブラジル移民が奨励された当時の世相をうかがわせる。
ちなみに、「ブラジル」で検索すると五十七件、「南米」では八十五件、「移民」だと二百二件の資料が出てくる。移民以外にも、外交、経済、農業など当時の南北米各国の事情を記したものも多い。
日本の報道によれば、同館では「今後も著作権者調査および著作権処理を行ない、大正時代の図書を順次追加していく予定」という。一般の人が気軽にブラジル移民史に触れる手助けとなりそうだ。