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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年9月6日付け

 ブラジル人向けの将棋の駒を作っている人がいる。ミナス州イパチンガ在住の新小田耕一さんである。八月十七日付当欄で「ブラジルの将棋、普及不振」を書いたが、その反響であった。さきごろ、私の作った駒を使えば、初心者のブラジル人の興味をそそる、とその作品を封筒で送ってくれた▼これが、なかなかの出来栄え。硬質の材で細工も丁寧である。駒には漢字でなく、略絵が彫られている。彫ったから高級感がある。王将が王冠、飛車、角行が長銃と短銃、金将が剣二本、銀将が十手?、桂馬は馬の首、香車が弓矢、歩兵が矢という具合。絵の色は黒、成れば裏は(金将の)剣に変る。どの駒が成ったかは、剣に添えられた星の数でわかるようになっている。絵の色は赤だ▼実は、略絵は、筆者が自己流に解釈した。だから、ブラジル人はあるいは、違う読み取り方をするかもしれない。しかし、それはさほど問題ではあるまい▼新小田さんは、この駒を用いれば文字、意味、呼び名を教える必要がないという。ブラジル将棋連盟には既刊の初心者用ポ語入門書がある。うまく調和させられないものだろうか。新小田さんは、問題は「初歩」で、基礎を覚えて、少し上達すれば、日本のインターネット将棋を観戦できるまで行ける、という▼それにしても、漢字の不得手なブラジル人のために駒づくりをせっせとやっていた人がいたとは……。この、たいへんに凝(こ)るあたりが微笑ましい。駒を実際見ると、笑いがこみあげてくる。(神)