2007年8月17日付け
麻生太郎外務大臣が今月十九日からブラジルを訪問する。九年振りとなる現職外相の来伯。両国の経済関係再活性化、来年に控えた日本移民百周年、日伯交流年の進展に向けた成果が期待されるところだ。ブラジルに住んだ経験をもち、現在は日ブラジル会議員連盟の会長もつとめる、〃知伯派〃の麻生大臣。ニッケイ新聞が実施した書面インタビューに対し、来伯を前に回答があったので、二回にわたり掲載する。
◎ニッケイ新聞(以下、編集部)=麻生大臣の過去のブラジル滞在についてお聞かせ下さい。○何年ごろ、どのような目的でブラジルに滞在されていましたか。○どの都市に、どのくらいの期間滞在されていましたか。○ご滞在当時のブラジル社会、日系社会の印象はどのようなものでしたか。○当時の出来事や、日系社会の人物に関する思い出話などあれば、具体的にお聞かせ下さい。
◎麻生大臣(以下、大臣)=一九六〇年代後半、実家の会社が経営の多角化を図りブラジルに進出しました。当時責任者だった私自身、サンパウロに一年近く滞在していました。当時のブラジルは、ハイパー・インフレに見舞われており、大変な時代でした。私はトヨタの自動車工場を見学したことがあり、その際、工場に勤務している日系の方から、現地職員に仕事を教え工場を立ち上げる際の様々な苦労話を伺ったことを記憶しております。
ブラジルでは、人種に関係なく、生活・社会が全体として国際化されていた国との印象を持ちました。日系人も大勢おられ、対日感情も悪くなく、日本にとってブラジルは非常に近い存在だと感じました。
当時の日本は現在ほど繁栄していなかったこともあり、日ブラジル双方とも、自信を持っているとは言い難かったものの、他方で、両国とも「これから伸びていこう」という気概を感じさせる国でありました。
◎編集部=現在、日本とブラジルはどのような関係にあるとお考えですか。また、将来の両国関係についてのお考えをお聞かせ下さい。
◎大臣=先般、私は「日本にとって中南米の意味を問う」と題し、スピーチを行いました、その中で私は、歴史的な転換期にある中南米と経済関係の強化、国際場りでの協力強化を含め、一層のパートナーシップの進展を図るべきである旨強調しました。日本とブラジルは、これまでも、良好な関係を築いてきましたが、一層の関係強化を図る時期に来ていると考えます。
二〇〇四年の小泉総理大臣(当時)のブラジル訪問を皮切りに、両国間で政府要人の往来が続き、それらを通じて、両政府間の関係は近年、緊密さの度合いを深めています。
経済関係においても、ブラジルにおけるデジタルテレビ日本方式の採用や鉄鋼分野での協力関係の深化など、関係再活性化の兆しが見られます。七月には、両国の経済界の方々により構成される日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議が開かれました。両国間の経済関係の再活性化のために、ブラジルによる一次産品の対日輸出といった形の伝統的な相互補完関係に加え、バイオ燃料や油田開発といった分野でのより高度な相互補完関係と対等な協働関係を目指した21世紀型戦略的経済パートナーシップを構築すべしとの提言をとりまとめました。
文化面でも、日本ではサッカー、ボサノバ、ファッション等でブラジルへの高い関心がみられますし、ブラジルにおいては、ポップカルチャーや日本料理を通じて日本への親近感が高まっていると聞いています。
このような様々な面での両国の関係緊密化の動きが、来年の日伯交流年・ブラジル日本人移住百周年を契機にさらに活性化していくことを期待しています。 (つづく)