ホーム | 日系社会ニュース | 「大好き、日本語で歌いたい」=その思いを達成=『ブラジル国歌』を翻訳=主婦の渡邉さん=楽譜に訳詞充てる 小野寺さん、伴奏、歌唱後の評=「上手にできていた」

「大好き、日本語で歌いたい」=その思いを達成=『ブラジル国歌』を翻訳=主婦の渡邉さん=楽譜に訳詞充てる 小野寺さん、伴奏、歌唱後の評=「上手にできていた」

2007年8月16日付け

 ブラジル連邦共和国の国歌(イーノ・ナシオナル・ブラジレイロ)の歌詞(ジョアキン・O・D・エストラーダ作詞)が、このほど、サンパウロ在住の主婦、渡邉智子さん(55)によって、楽譜にぴったり合致するように翻訳された。これまで、古野菊生氏(詩人、元在リオ日本大使館職員、元京都外語大助教授)らによって、翻訳されてきたが、楽譜に充てて歌うことはできなかった。詩の意味を損なうことなく、翻訳されたのは、小野寺七郎氏(小野寺音楽教室主宰、椎の実学園、エスペランサ婦人会音楽講師)によれば、初めてという。
 渡邉さんは、ブラジルが大好きな人。ブラジル国歌にふれたときから、明るくて、歌詞もすばらしい、ただ(ポ語歌詞に)ついていくのがたいへん、自分の国(日本)の言葉でも歌えたら、と思っていた。
 自身で「日本語にしてみよう」と意を決したのは、ポ語学校『ミシオナリオス・デ・バチスタ校』に入ったときだ。ここで一年二ヵ月学んだ。学校に自主学習の課程があり、渡邉さんは、テーマに国歌翻訳を選んだ。校長が渡邉さんの気持ちを評価し、担当教師が細部にまでわたり、指導してくれたという。教師は「エストラーダの詩は、難解で、この国の子たちにとっても理解がむずかしい」と言った。渡邉さんは、主語と述語の組立からやった。意訳する時の基礎であろうか。訳詞(一番)を紹介すると――
    ◇
イピランガの岸の静寂を
破る雄叫び上がれり
その時 自由の光が 祖国の空を照らせり
強き力に 平等への道開かれ
胸なる 自由の 熱き願い死も嫌(い)とわじ
愛する祖国に 永久の栄
ブラジル 夢多き国
愛と希望の光射しこみ
明るく澄み渡る空に 光る南十字星
その自然は 雄大なる 強く勇ましき巨人
権勢誇る 未来映し
(繰り返し)わが祖国 全ての国に勝りて佳し
母なる大地ぞ わが祖国 ブラジル
    ◇
 渡邉さんは、十四日午前、エスペランサ婦人会に小野寺講師をたずね、自身の訳詞を充てた、A4版四枚の楽譜を差し出した。講師はさっそく弾いた。渡邉さんも歌った。
 小野寺講師は、十五日朝パライゾの音楽教室で語った。「すばらしい。よくやったと思う。上手にできていた。これまで、古野さんらが訳詞したものは(文芸作品としては)優れていたが、歌えなかった。一世の数が減って、歌ってくれる人が少なくなっているのは残念だが、渡邉さんの仕事は残るのではないか」。
 小野寺講師によれば、歌の多くは、詩があって、それに曲がつけられてできた。その意味で渡邉さんの仕事は異色といえよう。
 渡邉さんは、十四日午後本社で「(私の作品が)これから翻訳を試みる人たちの〃叩き台〃になれば」と述べた。
 ブラジルに敬意を表したい日本人が、難易度最高の歌をブラジル人の前で歌う場面、あるいは、日本語学校の教材的な役割を果たすことも期待できるのではないか。