2007年8月16日付け
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)は、「二〇〇七年上半期の回顧と下半期の展望」をテーマに、業種別部会長シンポジウムを三日、開催した。十一部会からの報告と移転価格税制の説明が行われ、西林万寿夫在サンパウロ総領事が総評。各部会での要点をまとめる。
【コンサルタント部会】現状認識として、世界景気は、年四・九%で順調に成長が持続。それにともなってブラジル経済も成長し、新興国の台頭も顕著だ。だが、渡邉裕司部会長(JETROサンパウロ事務所所長)は「現状がいつまでも続かない」とした。
今後可能性のある四つのシナリオとして、(一)各国中銀の利上げ引き締めや「擬似バブル」の予想からの、世界規模のインフレ高進、(二)中国経済は株式や不動産など明らかなバブルが一部見られ、それに端を発する新興国のバブル崩壊、(三)原油の高騰、(四)中東など地域情勢、その他紛争などの地政的リスク、を揚げた。
そして、現在、中国には日本企業が五万社あることを例に「中国の後ろ盾には日本の技術がある。日本は中国とパートナーシップを組むことが大事だ」と、会場からの問いに答えた。
【金融部会】ブラジルは、経済面が着実な改善を継続し、投資適格国入りが現実を帯びてきた。外貨準備高は過去最高でインフレは落ち着いている。個人ローンと自動車ローンが引き続き伸びており、国内経済は全般的に好調。
下期も大きな波乱は予想されず現状を持続し、一・九レアル程度で越年を予想している。
【貿易部会】上期はコモディティーの輸出能力上昇を理由に堅調な黒字。下期は国内消費市場の拡大で輸入増加が見込まれている。
佐々木修部会長(ブラジル三菱商事社長)は「ブラジル経済は今後も伸びる。中国、インドが世界の胃袋なら、ブラジルは世界の台所だ」と展望を述べた。
【化学部会】部会報告を総合すると、上期は売上げ、利益ともに九割の会員が増加を報告。下期もそれぞれ七、八割が増加すると予測した。
中でも、高級化粧品は前年比二倍超の利益を記録し、下期には三十倍超の大幅増加を見込む。順調なマクロ経済、女性の社会進出、化粧をする年齢幅の広がりなどが要因という。
【機械金属部会】部会内の九部門のうち、鉄鋼・鉄材で、造船や農業機械、パイプラインが大幅に増え、記録的に販売が増加。下期も輸出はタイトだが、国内販売は好調を持続し、新記録樹立は確実と見ている。電力プラント、農機、建機、各種工具、軸受でも下期の販売増を見ている。
【繊維部会】レアル高や三年連続の暖冬により需給バランスが崩れ、慢性的な供給過多に。国内マーケットを巡る値下げ競争を余儀なくされている。下期はコスト競争力を一層高めて、事業拡大に努めたいとした。
【食品部会】全体としては、国内で概ね良好。尾崎英之部会長(東山農産加工社長)は「低所得者層によってひっぱられている分野がある」と話した。粉末スープ、乾燥麺などがあげられる。
ボルサ・ファミリアなどの政府政策が国内消費の増加につながるとし、コスト削減で強い会社を目指す。
【電子電気部会】家電関係では薄型テレビ、デジカメ、カーオーディオ、白物が伸びる。薄型テレビはマナウス・フリーゾーンで今年倍以上の生産が見込まれ、また価格破壊も進む。
松田雅信部会長(パナソニック・ド・ブラジル社長)はデジタルテレビ導入について、「グローボや他社もどんどんテスト波を流しているし、十二月から一気に商用放送が開始される。そうなれば、非常に画質が良くなります」と期待を込めた。
【建設不動産部会】中低所得者向けの不動産販売が好調。建設業界の売上額が〇五年に一億レアルを越えたと報告した。
下期は、建築では価格競争の激しさの常態化が予想される。不動産では、高級アパート販売は「転売目的ならいつまで続くかわからない」。欧米からの投資増加に「日本からの投資もあり得るか」と問うた。
【運輸サービス部会】全体的に好調。航空業界では航空管制並びにコンゴーニャス空港問題解決が重要なテーマ。通信業界ではIT全体が三年連続二桁の伸びを予測し、ラ米全体の四六%を占める、とした。
【自動車部会】四輪は二百八十七万台、二輪は百六十五万台と、ともに過去最高の生産台数を予測。長谷部省三部会長(ブラジル・トヨタ自動車社長)は、「遠くない将来に、国内販売三百万台は必ず達成されるだろう」としつつ、「二〇%を越える成長が続くとは思っていない。カーブはその内になめらかになる」と展望を話した。