2007年8月9日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙八日】世界の麻薬取引を牛耳っていることから、暗黒王と目されて各国で指名手配されているコロンビア人が七日、サンパウロ州バルエリ市で連警により逮捕された。男はラミレス・アバジア容疑者(44)で、麻薬取締法違反および資金洗浄、犯罪組織結成などの罪で起訴される。
同容疑者は妻と住んでいるバルエリ市アルディア・ダ・セーラ区の高級住宅で午前三時ごろ、連警に寝込みの所を急襲された、抵抗することなく逮捕された。同容疑者はコロンビアの麻薬四大カルテルの一つを支配する麻薬王で、カルテル同志の争いを避けてブラジルに潜伏していた。
ブラジル国内で指令を出しながら年間数千トンの麻薬を欧米に流し、それで得た利益を国内六州で投資に回していた。自動車販売会社などのほか、不動産や高級車、絵画など買い漁っていた。個人資産は一八億ドル(三四億レアル)と言われ、自宅は豪華な家具や日用品でぜいたく三昧の暮らしぶりだった。しかし、人付き合いは少なく、気の合ったコロンビア人仲間に限られていた。
連警は二年前から同容疑者を立件すべく張り込み捜査を続けてきたが、最近になりコロンビアに引き上げる動きを見せ始めたことから逮捕に踏み切った。六州にわたり二八カ所の家宅捜査令状をもとに急襲、ブラジル人十人、コロンビア人三人を逮捕した。四人のコロンビア人容疑者は逃亡中。
アバジア容疑者の自宅からは五四万四〇〇〇ドル、二五万ユーロ、五万五〇〇〇レアルのほか、車六台、プラズマTV十台、高級ブランド時計五十六個を押収した。
いっぽうでアメリカ麻薬取締本部(DEA)では、同容疑者が一九九〇年から二〇〇四年にかけてアメリカ国内に一〇〇〇トンの麻薬を密輸したこと、およびコロンビア国内でのマフィア闘争で三〇〇人を殺害、アメリカ国内で十五人を殺害した罪で有罪判決が出ていることから、ブラジル当局に犯人引渡しを要求するとの意向を示している。
ブラジル側は、引渡しは慎重を要するとしている。同容疑者をアメリカに引き渡すと死刑になる可能性があり、死刑を認めていないブラジルが、それを容認することになるからだ。