2007年8月1日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙七月三十一日】政府は三十日、サンパウロ市に第三空港を建設する案をわずか十日で廃案とする意向を表明した。ルーラ大統領は二十日、九十日以内の建設地選定を発表したが、同案は朝令暮改。三十日行われた航空委員会(Conac)で、ジョビン国防相がサンパウロ国際空港(クンビッカ空港)での第三滑走路建設を提案し、短期間に完成が期待されることで優先されたもの。また空港整備公団(Infraero)のペレイラ総裁の辞任が受理され、後任は民間人の起用を検討している。同公団は保有株の四九%を公開し、半官半民の民営化を行う。
第三空港建設案は、はかなくも一縷の夢と消えた。セーラサンパウロ州知事は二十七日、国防相と会い、サンパウロ市近郊の新空港建設よりクンビッカ空港の新滑走路増設が賢明な選択であると納得した。同空港の五〇便増便は混乱の原因にならないという観測である。
同空港新滑走路の予定地は、空港へ向かう道路の左側(北西方向)で、当初の計画二五〇〇メートルが、既に一部市街地となったため五〇〇メートル短縮するらしい。ロウセフ官房長官は二十三日、TAMとGOLへクンビッカ空港の新滑走路建設はないと通達したため、前言の撤回となった。
二十日のテレビでの大統領声明は、TAM航空の惨事直後であったため衝動発言となったようだ。新空港の建設見送りは、官房長官が大サンパウロ市圏内の市街地以外と発表したため、不動産業者の土地転がしを阻止する目的もあった。
サンパウロ州知事は国防相と会い、サンパウロ市とクンビッカ空港間の鉄道敷設やヴィラコッポス空港行き専用ターミナル建設、サンパウロ市とカンピーナス間の高速道路増設案を進言した。グアルーリョス市のピエッタ市長(労働者党=PT)には、第三滑走路増設のため住民二万世帯の立ち退き計画を五千世帯とすることで理解を求めた。
第三滑走路の増設案は前総裁の時代にも浮上したが、大統領府の合意が得られず引き出しで眠っていたようだ。新滑走路は必要であるが、時代と発展の代価を下層階級の地元住民が払うことで、今後の展開を前総裁は懸念した。
新滑走路は予定地が既に市街地化したため五〇〇メートル縮小するらしい。この五〇〇メートルが、これから問題になると前総裁はみる。コンゴーニャス空港の一部業務移転は問題ないが、滑走路短縮は疑問視されるという。
機能不全で非難が集中した民間航空庁(Anac)は、法改正が先決として現状維持らしい。国防相はAnac長官らを政治決着で更迭する意向だ。Anacは航空行政を仕切る重要な国家機関であり、政府要人とのよしみをよいことに同庁を止まり木とする悪習に終止符を打つ考え。
Anacの高官らは、権利保障を求め、開き直った。航空委員会は相次いだ航空惨事を機会にAnacの構造改革を行い、現総裁を官房長官の配下へ組み込む意向らしい。任期と給与はそのままで権限を縮小する。政府要人は選挙のみそぎを受けるが、Anac長官は選挙と関係なく法令で権利が保障される。政府は飼い犬に噛まれたという。