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魚にも一票が必要?!

 週刊『新潮』9月25日号に衝撃的な書き出しの文章があった。《がんと人類は似たような面があります。ともに、周囲の環境を破壊しながら、「増殖」を続けるところです》というものだ。以前から思っていたが、認めたくなかった内容が真正面から書いてあった▼《今や、世界の人口は70億になり、100億も目の前です。がん細胞の数と同様、人口も〃指数関数的に〃増えますから、遠くない将来、人口が1000億あるいは1兆となるかもしれませんが、そのとき、地球の環境は果たして持ちこたえることができるでしょうか? 正直言って、私は悲観的です》と続く。これは東大病院放射線科の中川恵一准教授、つまり東大のがん専門家が書いたものだ▼例えば「サンパウロ市都市圏の900万人に水を供給するカンタレイラ水系が、あと50日余りしかもたない」との報道が先週あったが、そこでも感じた。記事中で心配されているのは、人間の飲み水だけだ▼通常使わない貯水湖の底に残った水まで汲み上げている状態だから、同水系の魚などの生物一般、生態系も完全に破壊される可能性が高いはずだ。リオでエコサミットを開催するほど環境に関心があるブラジルだが、不思議なことに国民生活に関わることになると、誰も生態系のことを心配しないように見える▼選挙前だから余計に「人類のエゴ」が出るのか。緑の党ですらも「市民に供給する水より生態系を大事にしろ」と主張したら票を減らすと考えているのだろうか。民主主義において魚に一票はないし、代弁するものもいない。やっぱり《周囲の環境を破壊しながら「増殖」を続ける》のが人類の宿命なのか。(深)