2007年7月28日付け
海外日系人にとって日本政府との重要な窓口である海外日系人協会=本部・神奈川県横浜市=の運営会議が、十八日午前九時半からサンパウロ市内ホテルで行われ、約十カ国の日系代表ら約二十人が出席し、日本の財政状況などから将来的には存続が危ぶまれる現状への理解を深めると同時に、今後の対策を協議した。次々に拠出金が打ち切られるなどの困難な日本国内での財政状況を乗り越えるため、「海外からの会員を増やしたい」との呼びかけが行われた。
まず塚田千裕理事長からあいさつがあり、新しい協会のあり方を模索する意見を広く聞きたい、と語った。
続いて、伊藤昌輝専務理事が運営現状を報告。広報資料によれば現在の執行体制は会長、副会長、理事長、専務理事各一人に加え、常務理事七人で構成。事務方は事務局長以下三三人(職員一八人、嘱託一五人)。
〇六年の当期収入合計は約六億八六〇〇万円、当期支出合計は約七億四七〇〇万円。当期収支差額だけをみると約六一〇〇万円の赤字であり、前期繰越金が約九八〇〇万円あったため、次期繰越金が約三七〇〇万円となり、収支総額での赤字を免れた。
特徴なのはJICA、日本財団、厚生労働省などからの受託事業収入(約六億二〇〇〇万円)が当期収入の九割を占める依存型財政になっていること。そのため、ここ数年で次々に各種助成金や拠出金などが打ち切られている流れが徐々に響いてきている。
具体的には、〇三年にJICAの独立行政法人化による業務範囲の改編により助成金が廃止され、〇五年には外務省からの政府補助金事業も打ち切られた。
現在のまま推移すれば、九五年に外務省が策定したはずの「今後は、移住者・日系人支援施策を積極的に展開する」との基本方針が、風化する恐れがあるとの危機意識が会議で確認された。
全国都道府県からの分担金も〇五年から順次、長野県、鳥取県、岩手県よりの拠出が打ち切られ、全国知事会においても〇六年度の分担金の一時停止が決定された。都道府県からの分担金は、受託事業以外の収入の柱であり、A区分の十二都道府県からは六十万円ずつ、B区分の三十三都道府県からは五十万円ずつ、合計二三七〇万円を拠出されている。
加えて、現在は五九企業・団体から約七六〇万円の寄付金が集まっているが、さらに拡大を図ることは難しい状況である、との厳しい現状が報告された。
伊藤専務は「現状では極めて良好な運営状況にある」としつつも、この流れが続けば「将来見通しには安定運営の阻害要因が山積している」と分析、「中長期的な観点からの協会の運営基盤は極めて脆弱である」と結論づけた。
最大の懸念材料はJICAから受託している移住者・日系人支援事業の今後の動向だ。このまま推移すれば「移住事業の終了との判断により、関連事業が終了となり、新たな移住者・日系人支援への展開を失する」との強い危機感が表明された。同専務は「組織の維持すら懸念される」と予測した。
「日系人は財産」と考え、「積極的に展開」するのが国の基本方針であるならば、通常のODAとは別枠での扱いに期待感を表した。
その他、日本国内での風潮から、今までJICAから特命随時契約として受託してきた事業が、競争契約になるとの予測があり、強い懸念が表明された。
このように日本国内での資金調達が困難なことから、塚田理事長は「海外から賛助会員にご入会いただき、財政を支えて欲しい」との呼びかけを行った。
ハワイの富田いくこ代表は「協会の存在の広報に力を入れるべき」、パラグアイ日本人会連合会の小田俊春会長は「互恵関係が理想。我々がどれだけ協会に協力できるかを考えなくては」、ベネズエラ日系人協会の竹内浩之会長も「賛助会員などの小さな所から改善すれば、いずれ大きな結果につながる」などの意見をのべた。
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《海外日系人協会》日本国外団体・個人の年会費は一口百米ドル。日本国内企業は一口三万円、公益団体や個人は一万円。問い合わせ連絡先は電話=45(横浜)・211・1780、info@jadesas.or.jp