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「移民の歴史」保存を=証言、写真などデジタル化=――立教大学ラ米研究所中心に=カ・グランデ、バストスで資料収集=日本の学生の教材にも

2007年7月27日付け

 移民の歴史を保存するためのモデルケースとして――。立教大学ラテンアメリカ研究所が母体となり、プロジェクト「ブラジルにおける日系移民資料の分析・保存とデジタルアーカイブ構築・移民百年の軌跡」を進めている。二年の間にカンポ・グランデとバストス、二移住地の移民資料を収集し、重要な文献や写真のデジタル化を目指す計画だ。このほど、丸山浩明研究代表(46、同研究所所長、同大学文学部教授)が来伯し、実地の研究が始まった。同プロジェクトの成果は、今後、日本、ブラジルの両サイドで広く活用していけるような形式で残される。
 プロジェクトは、立教大学学術推進特別重点資金を得て、今年の三月に始動。ラテンアメリカ研究所研究員やJICA研究員ら七人がプロジェクトの分担者として携わり、慶応大学デジタルメディアコンテンツ統合研究機関(DMC)が協力して実施される。予算は二年間で約八百万円だ。
 「期間も予算も限られているので、たくさんいろいろなものをやるよりは、移民の特徴を鋭く捉えたものを、と考えています」と、丸山さんは、プロジェクトの構想を説明。
 主要な研究対象地に、二移住地を選んだ理由として、カンポ・グランデは移住の始まりが一九一四年と古く、沖縄移民をはじめ今でも人数が多いこと、バストスは計画的、組織的に政府が造成した入植地であり、移住地形成の歴史にカンポ・グランデとの性格の違いが見られることをあげた。
 今回は、丸山さんのみが来伯。カンポ・グランデでは、ペルーからブラジルに入った人や笠戸丸移民の子孫など代表的な家族に焦点をあてて、二世へのインタビューや家庭に残された写真のデジタル化などを進め、バストスでは、同地文協が移住八十周年に合わせて進めている、山中三郎記念バストス地域史料館の史料整理、デジタル化(二十五日付け既報)との調整を行った。
 今年の九月には、分担者やDMCの協力者らが来伯し、バストスで一気にデジタル化の作業を進める予定だ。
 また、プロジェクトでは、二〇〇八年の移民百周年祭に合わせて国際シンポジウムを開催し、研究の成果の発表を予定している。
 「既存の史料を使いながら、新たなものを残していきたい。この研究がコロニアでのモデルケースのようになれば」と丸山さん。
 「史料を保存することも一つだが、この成果が大学の教材となって、日本の学生に移民のことを伝えられるようになればいい」。また、「ブラジルでは、三、四、五世らが一世の歴史を学び、開拓者に対する意識を持つことに役立つのではないか」と、プロジェクトの結果に期待を寄せた。