2007年7月21日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】空軍は十九日、TAM航空エアバス機の事故原因を分析したところ、左右主翼の逆噴射装置の不均衡が惨事につながった可能性があると表明した。それは滑走路の停止地点に達しても機体の速度が落ちないので、パイロットが離陸を試みたことから理解できるという。緊急時の離陸は操縦の基本である。航空機のブレーキである逆噴射の不均衡は十三日、計測器で発見され、パイロットからも指摘されていた。十一年前にも大惨事を起こしていたTAM航空は、航空機を未整備のまま運行していたようだ。
空軍が逆噴射装置の未整備を指摘したことで、濡れた滑走路が事故原因ではないと政府は思ったらしい。国際問題担当のガルシア大統領顧問は、政府が責任を逃れたと手を叩いて喜んだようだ。政府は、責任逃れしか頭にないらしい。政府関係者が反省しないのは、ブラジルの体質的欠陥だと外紙が指摘した。
TAM航空は航空基準を守っており、惨事は同社の責任ではないといわんばかりである。同社の副社長はかき入れ時の七月、整備のために航空機をあそばせておくわけに行かないという。メーカーのマニュアルでは、欠陥発見後十日以内に整備とある。十日以内ならと未整備にもかかわらず、稼ぐために飛び立ったようだ。
機体の逆噴射装置を開閉するピンが作動しなかったことを同社技術陣は知っていた。ピンが作動しなくてもデジタル・システムで操作できるので、航空機を格納庫に寝かせる理由にはならないという考え方だ。デジタル・システムとは、自動車の手動ブレーキに相当するもの。
宮使えのパイロットや乗務員は、理屈で圧力を掛ける経営陣に勝てない。理屈では水の上でも歩ける。ピンの作動を問題視しない社の方針であれば、パイロットはピンに頼らない操縦法をあみ出さなければならない。管制塔の指示通りに操縦したら、事故につながる。それには独自の着陸地点を計算し、各空港滑走路とタイヤの滑り具合を把握する必要がある。
航空機メーカーのマニュアルでは、逆噴射装置の欠陥は飛行を見合わせた方がよいとされるが、飛行禁止の項にはない。逆噴射装置の一方または両方に問題がある場合、滑走路の状態にもよるが着陸地点の五五メートル手前で着陸することになっている。事故日の滑走路の状態は、事故原因に当たらないというTAM経営陣の見方だ。
TAMは一九九六年十月、乗客乗員九九人を乗せて離陸に失敗した。非常用のケーブルが離陸直後に引きちぎれ、逆噴射装置が自動的に始動したのだ。自動制御装置が過熱しランプが点滅しなかったため、パイロットは逆噴射の異常に気づかなかった。それから十一年、経営内容は全く改善されていない。
航空各社の熾烈な料金値下げ競争と経営の合理化で、航空機の最大限利用は不可避である。短時間での整備と整備ミスへの責任追及は、業界の泣き所らしい。いっぽうコンゴーニャス空港の危険区域とされるモエーマ区の住民は、毎日四〇〇回、航空機が頭上スレスレに飛ぶ。いつ自分の住むマンションが次の標的になるか気が気でない。