2007年7月14日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】外務省は十二日、ボリビア政府がマデイラ川の水力発電所建設に異議を申し立ててきたことを明らかにした。ボリビアのチョケフアンカ外相署名の覚書で環境保護院(IBAMA)が発電所建設に許可書を発行したことに抗議し、同件について話し合うため両国代表の召集を求めた。覚書にはIBAMAが、ボリビア領のマデイラ川への環境や社会、経済での影響を配慮することなく、ブラジルの思惑だけで決定したのは遺憾だとしている。
ボリビア政府の意向は政治的策謀と外務省が判断した。政府は水力発電所の建設を許可した技術的経緯をボリビア政府に説明するが、モラレス大統領の狙いは、ボリビアの国内問題解決のため政治的に利用することにあり、両国間の外交折衝では納まらないとみている。
ボリビア政府が覚書の通達前に現地の報道機関を招き、同件を針小棒大に騒ぎ立てたことを、ブラジル外務省が奇異としている。政治的駆け引きに持ち込もうとするモラレス政権の下心がミエミエだ。
これはアルゼンチンとウルグアイの間でもつれた製紙工場の建設を巡る摩擦を、ブラジルとボリビアの間でも引き起こそうとする策謀とブラジルはみている。アルゼンチン側は、製紙工場の建設がラプラタ川を汚染し環境破壊に当たると、国道を封鎖し、ウルグアイの観光産業に多大な損害をもたらした。
マデイラ川流域開発と水力発電所の建設計画は二〇〇六年にモラレス大統領に打診された。ボリビア政府は、同川の流域開発にとって発電所建設は重要であると歓迎の意を表し、祝典まで催した。同時にダム建設で起きるボリビア側の水位で、ブラジルを強請るタネになると思いついた。
ボリビア政府の豹変は〇七年一月、ペトロブラスへの天然ガス供給契約の更新時に始まった。このときボリビア政府は、賠償金を払わずにペトロブラスの設備を接収し、無償奪還する下心であった。それには、マデイラ川流域開発を政治問題化し、一悶着起す考えであった。
モラレス大統領にマデイラ川流域開発を打診したのは、FURNA(中央電力公団)である。FURNA発電所案はボリビア領マデイラ川支流のマモレー川の二発電所も含め四カ所であった。従ってボリビア政府にとって建設許可は、寝耳に水ではない。
横車を押すボリビア政府に無駄かも知れないが、外務省は順序として技術報告書を提出する。ボリビアが呼びかけた代表者会議に向けて、ブラジルは全ての書類を公開する。両国政府は他にも外交チャンネルがある。発電所建設には、ボリビア企業の参加もやぶさかでない。
ダムの建設により水位が上昇し、水路の利用価値が増す。船舶の航行権についても、ボリビアへ有利になる。他にもボリビアが得るものは多い。これを外交摩擦のタネにするのは、賢明ではない。代表者会議が尻尾のつかみ合いなら、お門違いではないかと関係者はいう。