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中東問題は単なる地域紛争=原油供給の途絶える心配無用

2007年7月11日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙六月二十八日】アラブ首長国連邦を除いた中東諸国は、イランを含めて世界平和の脅威となっていることを、ブラジルとの関係で観察してみる。バレル当たり七〇ドル近くで定着した原油は、オイル・ショックを起さずにどこまで高騰するか。その疑問に答えたのが、次の論説である。
 ワシントン国際戦略研究所のラットワック氏とロンドン歴史学院のフェルグソン教授が十五日、次のような論説を発表した。中東問題が頭痛の種であったのは、冷戦といわれた九〇年代の話だという。中東問題は単なる地域紛争であると両氏はみている。
 中東紛争は合意に至ることがないので勝手に紛争をやらせ、周囲は騒がない方がよい。政治問題として忘れること。誰かが仲介努力をしても無駄だ。イスラム圏のテロリストは聖戦(ジハード)と叫ぶが、誰が彼らの信仰に共鳴するのか。中東問題に世界の関心が薄れれば、恫喝はうるさいにょう鉢に過ぎない。
 第三次世界大戦は中東で勃発するという予言に、振り回されない方がよい。イランの動きが注目されているが、マスコミ報道と水面下の動きは一致しない。中東地域が将来も石油とガスの大供給源であることに変わりはないので、米政府は手を打っている。
 中東が重要視されるのは原油のためであり、それ以外の何物でもない。繰り返し起きるテロや地域紛争で、無関係の住民の血が流されるのは事実である。それは世界の石油埋蔵量の六〇%が、同地域の地下にあるからだ。原油は反イスラム国にも売る。住民の尊い犠牲には気の毒としか言いようがない。
 ブラジルは原油高騰にもかかわらず、インフレは下火となり、経済はわずかでも成長している。この現象は何を意味するか。世界は原油が高騰しても経済活動に支障はなく、オイルダラーはアラブ諸国へ入り、イスラム教の信仰も安泰である。
 イランが摩擦を起しても、原油の供給は止まらない。ロシアの無関心と中国の温和政策により、中東地域の地政学的意義は失われつつある。原油はこれから、高騰することはあっても供給が絶えることはない。国際経済は中東紛争をよそ目に順調な発展を続けている。中東諸国とアラブ諸国が勝手にドンパチをやっているのだ。
 イスラエル建国の是非をここでは論じない。冷戦時代に一方の旗頭であったロシアは、イスラエル建国の筆頭支持者であった。そのロシアは、イスラエルについて何も言わない。米国にとっては重荷となった。欧米政府は現在も、経済支援を続けている。中東問題はそれだけの話だ。