2007年7月11日付け
無農薬栽培だというポンカンを知人からいただいた。甘味が濃く、美味しかった。部内でしろうとたちの無農薬話が始まった。まったく農薬を使用せずに作物ができるものだろうか、などと▼そのうち、一人が皮を剥いたポンカンからうじ虫が出てきた。色は黄色と白色の中間。蠢(うご)めいていた。さっそく、声がとんだ。「一緒に食べてしまえ。栄養になるぞ」「死にゃせん」。まったく無責任なもの言いだ。一番、周囲を納得させたのは「これで、無農薬栽培が証明されたネ。野菜でもいうでしょう。無農薬栽培したものには虫食いがあると…」だった▼話はすぐに、虫をたべたら、腹中で大きくならないか、へ飛躍した。年配者は、回虫とは違う、と諭したあと、「昔、日本の野菜栽培には人糞が(肥料として)使用された。回虫の卵が腹中で孵り、人が食べたものを横取りした。だから、回虫をたくさんかかえた人は太れなかった」と懐古した▼若い女性がすかさず反応した。「それだ。回虫ダイエットだ」。本当にあるのだ。回虫を腹中で飼い、栄養が吸収される前に回虫に食べてもらうという寸法である。このダイエット法には専門家の戒めがある。「寄生虫感染症という病気を持っているようなものだ。ダイエットのために回虫を求めるのはとんでもない話だ」▼美味しいポンカンから派生して話題は尽きなかった。無農薬で作物ができるものなら、可能なかぎり、そうして欲しいというのが食べる側の切なる願いだ。(神)