2007年7月3日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】国家エネルギー審議会が先週、原子力発電所アングラ3号の工事再開を決定したことを受けて、ブラジルはこれまでの潤沢豊富かつ安価な電力供給の時代に終止符を打つことになる。
アングラ3号は予定出力一三五メガワット(MW)で、当初の見積りでは一時間当りMWが一三八レアルとなっており、過去の入札価格で最高水準になると予想されている。当然ながら高価な電気料金は消費者である国民が代償を払うことになる。
今回の工事再開決定は一九八六年に拡充プランが打切りになって以来のもので、政府の原子力エネルギー政策拡大の意図を明らかにした。政府は二〇三〇年までに出力一〇〇〇MWの原子炉八基を建設する意向で、取りあえずアングラ3号は二〇一三年の稼動を目指す。アングラ3号のみで七二億レアルの国庫負担が見積られている。
核エネルギーがにわかに脚光を浴びた背景には、政府が推進しているマディラ川の水力発電所計画が環境省の承認を得られないまま、暗礁に乗り上げた形になったことにある。政府、とくにルーラ大統領の圧力にもかかわらず進展を見ないことから、代表案として核エネルギーが浮上したもの。
コスト高で高価なプロジェクトになることは陽の目を見るより明らかだが、電力不足による経済停滞、果ては大停電の非常事態を避けるために背に腹は代えられないとの思惑が込められている。しかも核エネルギーも環境保全問題が横たわっており、これのみに一億レアルの費用を覚悟する必要がある。
核エネルギーの反対論者は先駆者であるアメリカを例に挙げ、コスト高でプロジェクトを中断したとして、ブラジルでも採算が取れないと忠告している。現にすでに稼動しているアングラ1号機と2号機は当初の予想を大幅に上回るコスト高に悩んでいると指摘している。
水力発電の最後の落札価格は、一時間MW当り一二六・七七レアルで、火力発電は一三二・三九レアル。過去十年間で家庭用電気料金は一四七%、工業用は三八八%の値上げを見た。アングラ3号の落札はMW当り一五〇レアルになるとも見られており、将来の電力料金の大幅値上げは避けられないとみられている。