2007年6月14日付け
パラー州アレンケール在住の坂口成夫さん(81)が、さきごろ、マラリヤに関して知っていること、経験したことをみなさんの参考に供したい、と便りを寄せた。坂口さんは、陸軍航空士官学校五十八期生。旧満州で終戦を迎え、復員後、第一回アマゾン・ジュート移民として移住してきた。多くの人々をマラリアから救ったという功績によって、州政府から名誉州民章を授与されている。
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私は、アマゾン暮らし五十三年になる。しかし、よく知っているのは、アレンケール、サンタレンおよびその付近、ベレンおよびその付近。マナウス、リオ、サンパウロは街の中だけ、バウルー(サンパウロ州)は結核療養所だけで、外のロライマ、アマゾナス、アクレ、マットグロッソ、ミナス、ゴヤスなどは未知の領域である。
だから、松栄孝さんの連載「身近なアマゾン」は、たいへん興味を持って読ませていただいた。ただその中の昨年十月三日付掲載の「マラリヤについて」の記述にひっかかる個所があった。
マラリヤを媒介するアノフェレス(ハマダラ蚊)は、アマゾン本流の濁水を嫌って、陸地を流れる澄んだ水を好んで棲むといわれている。このため、濁水のある本流付近はほとんどマラリヤはなく、一歩陸地に入った澄んだ水の所では多く、沼沢地でも水が澄んでいるのでマラリヤがある。
私達もはじめに入植した所は本流に近く、繊維用のジュータを栽培していたが、その間は一度もマラリヤはなく、聞いたこともなかった。
その後、陸地に移ってジュータの種子を取るための栽培を始めた。そこではマラリヤは日常茶飯事で、私も何回か罹り、家族全員が罹った。特に子供はスプレンキーナというマラリヤ薬の注射で、お尻や腕に穴が開いて、これが塞がるのに大分かかり、大きくなっても、まだその痕が残るくらいだった。
結局、マラリヤの薬も薬局から買ったものでは、熱は下がっても根治するまでは薬の副作用で、胃や肝臓を傷めたり、その手当などでお金がなくなって、根治するまでいくのはたいへんだった。
それが、援協の医師で、マラリヤの専門医の戸田先生から教わったカラパナウーバの木の皮の茶を飲み続けて、家族全員マラリヤから解放された。
私は医者でない。しかし、同病相憐れむで、近隣のブラジル人にもこれを教えて、次から次へと、中には遠くから話を聞いて来る人にも教えて、結局、何百人ものブラジル人を救いあげた。
このカラパナウーバのお茶の作り方、用法を述べて、マラリヤで困っている人に少しでも役にたてば、と筆を執った。
▽お茶の作り方(一人分)カラパナウーバの木の皮を削ったもの三百グラム、二リットルの水で一リットルになるまで煮詰める。
削ったものでなく、単に木の皮を剥いだものは、マッシャードの背でよく叩く。灰黒色の木の肌と黄色がかった木の肌のものがあるが、黒味がかった方が効き目が良いようだ。
▽用法および用量
熱のある人は、コップ一杯宛て、一日三回、熱がなくなるまで続ける。大体三日くらいで熱は下がる。
熱はないが、まだマラリヤがあると思われる人および予防には、コップ一日一回一杯。地域にマラリヤがある場合は、毎日これを続ける。
子供は半量、幼児はさらにその半量。苦いので飲みたがらないが、シネラでお尻を叩いて飲ませる。熱いうちに飲むのがよい。苦味が少ないからである。なお直後にピラクイを一つまみ食べると、苦味は消失する。塩でもよいが、ピラクイの方が効果が大きい。 (つづく、坂口成夫)