2007年6月13日付け
【ヴェージャ誌二〇〇八号】時代は、まさに「ブラジル買い」で「ブラジル売り」がほとんどないのでドルは止め処もなく流入する。過去二世紀、外資がブラジルに錨を下ろしたことはなかった。ブラジルは独立以来、外資の満ち潮がやって来ると、間もなく引き潮がやって来た。その歴史が今、書き換えられそうだ。ブラジルは過去十年間、経済安定と将来性で国際金融のご褒美をもらった。政府が基本金利の引き下げを始めたので、外資は国債ではなく民間企業へ投資を始めた。外資の行き先は、インフラや住宅、教育、技術などの生産部門である。
その現象が顕著なのは、サンパウロ市証券取引所の株価指数である。二〇〇四年から累計で七二〇億レアルが新株に投入された。主にマンションのコンドミニアム建設とエタノール精製所の建設へ投じられた。証券取引所を通さずファンドでベンチャー投資されたものもある。
代表選手がマイクロソフトやグーグル、スカイプなど。二〇〇六年には〇五年の倍もの企業が投資を行った。これらベンチャー企業は〇七年、三〇億ドルを投資する意気込みである。その例は枚挙に暇がない。
ファンドの一つ、ガヴェアはフラガ元中銀総裁が指揮を採り、教育や運輸、興行など妙な分野に投資をしている。さらにマクドナルドやショッピング・センター管理へ資本参加をした。一風変わっているのは、サーカス興行や大衆車のカーレース、解剖人体の実物展示を行った。
フラガ元総裁はブラジルの証券取引所をカジノだと言った。最近ようやく、企業の成長を助ける機関に成長したという。これはブラジルで、金融経済と実体経済の結婚式が行われているのだ。高金利時代は国債を買って王侯気分でいた投資家が、金利引き下げで配当が減少し始めたから投資先を変更したのだ。
新しい投資先として注目されるのが、マンション建設とエタノール。大学も投資呼び込みに努力している。〇二年の金融危機からみると、状況は逆転した。金余りと企画不足である。投資家を魅了するプロジェクトが少ないのは、ブラジル人が企画制作の不慣れか、不得手なせいか。
ブラジルは、フィッチ格付け会社によりBB+と過去最高のランクを与えられた。いままで同ランクがなかったため、欧米の年金基金が投資先を探していた一〇兆ドルを採り損ねた。格付けの引き上げと金利の引き下げが、ブラジルに新しい時代の投資メンタリティを生んでいる。
以前は単純に国債を買えばよかった。これからは投資先の勉強をしなければならない。株価指数が五万ポイントを超えて配当率が一五%に達したのに、DIファンドは四%に留まった。内外の投資家は目覚めて株式投資へ走り、優良株が不足する始末だ。
多くの企業が、このチャンスを見逃す手はないと新株発行を急いでいる。ブラジルは喜望峰を通過したのだ。いま、過去の遅れを取り戻そうとしている。ブラジル丸はこれから先、泰平の海に順風を受けて航海できるだろうか。
航路は間違っていないようだ。航行速度は相変わらずのろい。ただ信用度と将来性で、ようやく航海が始まったところ。これに競争力と生産性の改革が加われば、航海は楽になるに違いない。