2007年6月2日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】大統領府は五月三十一日、経済活性化計画(PAC)の中で最優先扱いの治安計画を発表した。しかし、財源不足でエンジンがかからないようだ。政府は向こう九年間に、地方自治体の治安機関へ一六三億レアルを交付する。計画立案者のジェンロ法相は、軍警と市警、消防士の基本給を全国一律一六〇〇レアルとする意向だ。さらに軍警の住宅購入を対象に特別ローンを設ける。また全国十一の大都市で暴力対策に当たる連警職員を、現在の一万二三六〇人から一万五〇〇〇人へ増員する計画だ。
経済活性化計画の環境整備を行う治安計画が、ルーラ大統領によって了承されたものの、財源不足のため計画倒れになりそうだ。現行システムでは、警察官の基本給が州により異なる。最も危険な地域も平和な村も一律である。計画はリオデジャネイロ州の場合、現行の八七四レアルから二倍となる。首都は、二九〇〇レアルの破格待遇。
連警職員はブラジルを蝕む犯罪組織と戦うエリート部隊とされる。これは今後、ブラジルの治安システムを占う実験部隊になる。経済的裏付けのない計画の実施は、財務省と予算管理省スタッフに泣きつくしかないらしい。法相は下院治安委員会や連立党懇談会、地方自治体連絡会議で、資金難の現状を説明する。
法相の考えでは、大都市における犯罪組織の跋扈(ばっこ)を三年から六年の間に官民の協力で鎮圧する計画である。対象となる都市は、サンパウロ市とリオ、ヴィトリア、ベレン、レシッフェ、マセイオ、サルバドール、ポルト・アレグレ、ベロ・オリゾンテ、クリチーバ、ブラジリアなど。
犯罪件数が特に多いカンピーナスとフォルタレーザは同計画から外れ特殊扱いとなり、PACに織り込まれた都市が対象となっている。同計画の作戦開始は、十月から六カ月間。作戦は三部に分ける。指導、訓練、実行となる。
治安特殊部隊は、軍警と共同作戦で犯罪組織と対峙する。各州には現在、三〇〇人の特殊部隊員が配置されている。同隊員はシングル・マザーやストリート・チルドレン、貧困家庭の福祉活動で訓練中の市民警察の代理も行う。
五〇万人の軍警は、家賃の安いスラム街に居住し、家族の生命が脅かされている。政府は軍警が安全な地域で住宅を購入するよう便宜を図る。政府は軍警の世帯収入が要求額に達しなくても、融資をあっ旋するという。住宅購入のためにローンを組むなど、考えたことがない軍警は多い。
軍警が給料では生活が苦しいため、内職に専念するのは通弊となっている。政府は軍警の特殊教育と技術者養成に力をいれ、所得増により警察官の不正行為を防ぐ計画である。
基本給一六〇〇レアルは、北東部では信任職の給料である。軍警には、作戦事故で不具になった者や発狂した休職者が多い。休職者も一六〇〇レアルを貰えるなら、法相に足を向けて寝られないという。
軍警の給料が最も少ないのは、アラゴアス州の八五〇レアル。リオ州もアラゴアス州も軍警の子沢山は多く、妻は掃除婦や洗濯などの内職をしている。夫は軍警勤務以外に、借金の取り立てや警備員をして家計を支えている。