ドル、2レアルを切る=6年前の水準に=市場は今後も続落と予測=大統領は諦観の呈
2007年5月17日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】ドル通貨は十五日、ついに二レアル台を切って一・九八二レアルにつけ、二〇〇一年一月の水準へ戻った。これからもドル通貨は続落するという市場関係者の予測である。中央銀行に為替介入の意向はなく、購入済みの四億二五〇〇万ドルを競売に掛けるらしい。自動車産業を始め繊維、縫製、製靴、家具、造船など為替率の影響をもろに受ける産業分野で、従業員の給与システムに何らかの救済措置を施すと、ジョルジェ産業開発相が緊急対策を示唆した。
レアル高ドル安の影響で、ブラジル産業の空洞化は確実に進行しそうだ。ルーラ大統領は、為替対策を中銀に一任すると諦観の呈である。米通貨が怒とうのように留まることなく続落するのを押し止めるすべがないという。波の上に乗り上げて、達観するより方法がないらしい。
サンタンデル銀行は、為替率は攻防を繰り返しながら年末には一ドル一・九レアル程度に達するとみている。ブラジルの産業構造は、コモディテイ市場の好況を受け経済の基礎条件が充実しつつある。さらにドル通貨は、世界各国の通貨に比し弱気である。このような傾向が定着した今、中銀は何もできないという。
ドル安を利用して資本財の輸入が増加し、工業設備は近代化され、生産性と能率が飛躍的に向上する。一方で基本金利は引き下げられ、あとは技術革新で輸出体制をつくるしかない。為替危機を乗り切るには、奇跡もマジックも期待してはならないと大統領が戒めた。
ドル安の恩恵は購買力強化、割安な海外旅行、インフレ抑制で、消費者と輸入業者が受ける。特に一・九九レアル店は商品幅が広くなる。それから、製品の国際相場が値上がりしている企業、主要部品を輸入するメーカーやハイテク産業など。
ドル安現象と闘っているのはブラジルだけではなく、途上国全般だと経済評論家のミング氏がいう。これは市場に出回っている通貨流通量を国際金融市場が消化し切れないためとみている。
メーカーの輸出が落ち込んでもブラジルの貿易黒字は昨年の四六一億ドルを超えて増えている。外資の流入にも拍車がかかり、二〇〇億ドルを超える。ブラジル企業が外国投資に努力しているにもかかわらず、ブラジルにドルは堰を切ったように流れ込む。ドル浸しの環境が出来上がったのだ。
国際金融市場による流通通貨の消化は、余り期待できない。気休め位の効果だが、輸入関税を下げ、ドル需要を高めるしかない。しかし、政府は逆に繊維と靴、家具の関税を引き上げた。サンパウロ州工業連盟(FIESP)が、さらに関税引き上げをあおったとミング氏がその愚を批判した。
輸入関税の引き上げは、輸出業者の生産能力を摘み取るようなもの。モラレス大統領がボリビアにあるペトロブラスの施設を接収したのと同じ愚行である。ブラジルの輸出業者を悩ませているのは、為替率ではなく重税である。重税のため、出来上がった製品が外国市場では高過ぎて競争にならないのだ。