2007年5月12日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】ボリビアのモラレス大統領は十日、ペトロブラス石油公団が同国に建設した精製所二カ所を、資源国有化の一環として一億一二〇〇万ドルで引き取ることに合意した。交渉は紆余曲折の結果、ボリビア政府は二条件を要求した。決済は二回払い、最終回は六十日の期限。支払はガスの供給で行う。同合意を以って同志ルーラ大統領と対決することは今後ないと、モラレス大統領が誓った。ペトロブラス石油公団は同国に一億二四〇〇万ドルを投資、一二〇〇万ドルを失い撤退することになった。
モラレス政権がペトロブラスの二精製所に軍隊を送り込んだ強制接収は、恫喝(どうかつ)と策略で翻弄される中、ようやく決着した。決済はガスの供給で行う上、売買契約の履行に関する保証はあいまいである。事実上の出血サービスによる無念の撤退といえる。
合意は放棄に近いもの。ボリビア政府は、契約の履行でのらりくらりとペトロブラスをもてあそび、事態の予測が困難な状況での決断であった。交渉は妥当とロンドー鉱動相はいうが、指値一億五三〇〇万ドルは、二精製所の設備と製品在庫を含めていた。
合意価格一億一二〇〇万ドルは、サンタクルースとコチャバンバ精製所の株価である。しかし、実際に投資したのは、一九九九年までに一億四〇〇万ドル。さらにその後、二〇〇〇万ドルをつぎ込んだ。流動資産である製品在庫は、タダでくれたようなもの。
さらに鉱動相は、ルーラ大統領の売却価格への関与を否定した。大統領は常にペトロブラスの指値支持を表明しており、鉱動相の談話と矛盾する。合意は口頭で行われた。文書は同日夜、モラレス大統領のルーラ大統領との対決終了宣言とともに渡された。
合意価格のあいまいさとボリビア政府の回答に対する、ブラジル政府とペトロブラスの疑心暗鬼は続く。ボリビア政府による製品在庫の接収へ対応するため、ペトロブラスは指値を一億三五〇〇万ドルへ下げた。しかし、ボリビア政府は一億一〇〇〇万ドル以上では応じようとしなかった。
石油精製品のペトロブラス割当分二〇%を、ボリビア政府は無効にした。ボリビア政府は、裸馬に怪我なしの呈である。精製所をボリビア政府の手に任すなら、保全管理を知らない同政府は遠からず精製所をガラクタの山にする。
ペトロブラス精製所を買収したボリビア政府にとって、国有化紛争は第三ラウンドに入る。第一が国有化宣言。第二がガスの値上げ。いつ息切れするか知れない苦戦である。
アナリストの計算では、精製所売却によるペトロブラスの実質損害は、八〇〇〇万ドルとされる。ボリビア精製所の生産は、同公団全生産の二・五%だから損害は軽微とみている。
ボリビア精製所は経営困難に陥ったなら、ベネズエラに助けを求めると思われる。短期には多少の利益を上げるが、中長期には設備の更新資金がないから経営は挫折する。そうなると、財政難から政治まで混乱する。それよりもブラジルへのガス供給が不安定になるから、ブラジルのガス事情が心配である。