2007年5月3日付け
日本の衛星の最新技術でアマゾン環境保全に貢献――。連邦警察科学技術部(ブラジリア)のジェラウド・ベルトーロ部長は四月二十五日、「日本からの協力は非常に重要だ」と語り、支援を讃えた。人工衛星から撮影した高解像度写真を解析することにより、森林の不法伐採、鉱物資源の違法採掘、原始林の原生植物や動物の密輸の取り締まりに飛躍的な効果が期待されている。
地球温暖化の危機がさけばれる中、アマゾン地域の森林の不法伐採は国際的な注目をあびている。ブラジル政府はすでに中国と協力して人工衛星を打ち上げ、衛星写真をつかって解析を進めているが、画像解像度や解析技術の問題から、思うような成果が上げられないでいる現状だという。
ブラジル政府の要請を受けJICAでは、地理情報システム(GIS)専門家の川口学氏を〇六年九月中旬から今年二月末まで派遣し、ソフトウエアの選定とデータベースの構築などを行い、必要とされる情報の提供と、さらなる課題の分析をした。
その結果、アマゾン地域では年間の半分が雲に覆われているため、従来の衛星写真では森林伐採などを監視することが難しいことが分かった。
昨年一月に打ち上げた日本の衛星「だいち」の映像を使えば、雲の下までとらえることができる。川口専門家は「雲の下をとらえる技術は日本が一番進んでいる」と説明する。
そこでJAXA(宇宙航空開発機構)の協力により、三~四カ月に一度、五十メートルの解像度の衛星写真を無償提供してもらえないか協力依頼しているところ。より高解像度な写真(十メートル以上)は有料だが、伯中衛星の解像度は二百五十メートルしかないため、十分に役に立つデータだという。
現在、連邦警察内の環境犯罪鑑定技術者は西部アマゾン地域を中心に八十六人おり、不法伐採の六百件を先頭に、不法採掘の約三百件など年間に合計約一千件の摘発をしている。一人当たり年間十件の鑑定をしている計算だ。裁判に必要な鑑定書の作成期間が最短で三カ月かかっており、これを短縮化する必要性がある。
高解像度で時系列の衛星画像を活用して、森林破壊を実証する解析技術の習得は急務となっている。
JICA(国際協力機構)ブラジル事務所では、すでに川口専門家を派遣したほか、ブラジルから連警二人、IBAMA(国立自然環境保護院)一人を日本へ研修に呼ぶなどの協力をしている。
国際世論の高まりを受け、「連邦警察としても環境犯罪取り締まりを重視している」とベルトーロ部長は強調。環境型の新しい国際協力としてJICAにも期待がかかっている。