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百周年後に聖支所閉鎖か=ブラジリア=緒方JICA理事長が会見=明言避けたが否定せず=漸次削減の移住事業費

2007年4月26日付け

 【ブラジリア発】二十二日からブラジルを訪問してアモリン外相ら要人と懇談した国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長(79)は二十四日午後、首都で記者会見を行い、ブラジルや日系社会との今後の関係についての見通しをのべた。ブラジルに対しては環境、貧困削減、南南協力を柱に支援し、日系社会との関係に関しては、移住事業費が年々縮小傾向にあることを認め、「今後はより効率的な支援をしていかなければならない」などと語った。
 百周年後にサンパウロ支所が縮小閉鎖されるとの情報を確かめると、緒方理事長は「すでに縮小している」と一部肯定しつつも、「現時点で廃止は決めていない」とのみ語った。ただし、来年十月に同機構が国際協力銀行(JBIC)の円借款部門と合併するに伴い、ブラジリアの事務所に統合する方向であり、聖支所も「百周年後にはわからない」とし、閉鎖との明言は避けた。
 日系社会に関しては、一世の高齢化に対する福祉対策と、二世以降の世代への広い意味での日本語普及などを柱にする方針。「予算の制約がある」ことを何度も繰り返し、日本語センターが提案した日語速成塾には「支援するつもりはない」と否定した。
 百周年への協力には、同席したブラジル事務所の小林正博所長から「JICAとしても立派に祝いたい。協力したい気持ちだ」との言葉があったが、具体的項目は「百周年記念誌」「映像記録」「史料のデジタル化」「日本国内での写真展開催」だけだった。

「より効率的な支援に」

 全世界の日系社会で使われる移住事業費が現在、約五億円で減少傾向にあることを明らかになり、緒方理事長は「増えることはない」と明言した。ODA全体が非常に苦しい緊縮傾向にあり、ある予算の中でどれだけ効率的にやっていくかが要点となっている、と現状を説明した。
 ニッケイ新聞の取材に対し、小林所長は五億円のうち、ブラジルへの予算はその半額程度だが、日系社会青年ボランティアや同シニア、日本語教師の本邦研修はそこには含まれない。
 さらに同所長は会見で、「日系社会は成熟した段階に達している。日系社会に支援する必要が減っていることは疑いようがない。問題は支援を減らすスピード。営農支援は早い段階でやめる。日本語教師研修に関しては適切に対応していく」との見解を披露。いずれ時間の問題であることを明確にし、支援削減という実態を「日系社会との新たな関係の構築」という麗句で表現した。
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 二十二日から二十五日までの四日間にわたる、緒方理事長来伯の中心課題は「中進国への援助」「日系社会との関係」の見直しと「JBICとの統合に関わるブラジルとの調整」の三点だった。
 首都ではアモリン外相はじめ、大統領府のルイス・ソアレス・ドゥルシ官房長官、ブラジル国際協力庁(ABC)のルイス・エンリッケ・ペレイラ・ダ・フォンセッカ長官らと懇談。
 中でもアモリン外相とは、ポ語圏以外のアフリカ諸国とも南南協力(中進国が発展途上国を支援すること)を日伯で一緒にやっていくことが中心的に話し合われたほか、バイオ燃料に関する技術支援を求められ、「今後話し合っていきましょう」と応じた。
 緒方理事長は二十五日、フォス・ド・イグアスへ寄り、翌日にパラグアイのイグアス移住地を視察し、二十七日に帰路につく予定。