2007年4月19日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】リオデジャネイロ市中心部に近いスラム街モーロ・ダ・ミネイラで十七日、犯罪組織同士の縄張り争いによる銃撃戦が十二時間にわたって繰り広げられ、十九人の死者を出した。犯罪組織ADA(友人の友人)の縄張りにコマンド・ヴェルメーリョ(CV)が侵略を試みたのが、騒動の発端となったらしい。中心街と南区をつなぐ主要道路のサンタバルバラ・トンネルを閉鎖し、市街戦さながらの射撃戦が始まった。近くの墓地に逃げ込んだメンバーは、待機中の軍警部隊と交戦する破目になった。
墓地があるカトゥンビー通りは、参列者が告別式や埋葬を中止し、死の町と化した。騒動は、麻薬の密売拠点奪い合いが原因のようだ。犠牲者十九人のうち十三人は犯罪組織のメンバー、六人は流れ弾を被弾した通行人であった。
CVは、スラム街ジュラメントやアレマン、マンゲイラ、ファレッチからメンバー五十人を召集し、モーロ・ダ・ミネイラにあるADAの密売拠点を侵略した。ADAの応戦でCVのメンバー九人が射殺された。他は墓地へ逃げ込み、四人が軍警によって射殺された。十一人は拘束。
同販売拠点は、これまで何度も奪い合いが繰り返され、険悪な空気が漂っていた。治安当局も事前に察知していたが、CVは組織が大きく、どこで誰が行動を起すかは予測困難という。犯罪組織は十六日午後十一時から交戦を始め、軍警は十七日午前七時半、現場に到着した。
リオデジャネイロ州のカブラル知事は、陸軍の出動を要請したが、騒動が沈静化した後の市街パトロールのためである。市街戦には訓練を受けている兵士しかないとされる。
墓地は多数の石塔があり、隠れ場に適している。墓地の霊安室では、母親を埋葬する遺族が告別の最中であった。そこへCVの落ち武者が逃げ込み、遺族はトイレへ避難した。トイレで怯えていた遺族らは、落ち武者をかくまっていないか軍警によって取り調べを受けた。CVによるADA侵略は、治安当局の介入により失敗した。
犯罪分析の専門家によれば、陸軍の応援は組織同士の縄張り争いに役立たないという。治安当局の取り締まり強化で最近、麻薬の密売拠点が次々と失われている。麻薬の売上落ち込みや麻薬常用者の逃避、麻薬市場の縮小で犯罪組織は追い詰められている。
陸軍の応援部隊は、見るからに坊やたちである。兵士は戦場で敵を倒すのが役目であって、犯罪組織の撲滅訓練は受けていない。役目が違う。麻薬対策に陸軍を引っ張り出し、兵士に不測の事故が起きる方が心配だといえそうだ。
麻薬組織は行き詰まっているらしい。麻薬密売の収入は先細りで、武器の購入や組員の手当ては増える傾向にある。組織同士の摩擦は毎回過熱化している。元軍警などの組織関与は、自殺行為といえる。弾丸と生命のやりとりで得た縄張りは益々狭められ、麻薬ビジネスも終焉に近づきつつあるようだ。