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コラム 樹海

2007年4月10日付け

 中国は共産党が支配する一党独裁の国だけれども、経済については資本主義を取り入れ勇ましい勢いである。上海に代表される沿岸部の発展は凄まじく外資の導入にも積極的だし、保有外貨は1兆ドルを超し世界的な経済大国に成長し鼻息は荒い。石油や鉄鉱石などの輸入も急激に膨れ上がり、中南米やアフリカへの進出も激しい▼その一方では、繊維製品の輸出が多くの国で摩擦を引き起こし話題になったりもする。こうしたゴタゴタも安定的な繁栄に到るまでの「騒ぎ」だろうが、先月の全国人民代表大会(国会)で「物権法」が圧倒的な多数で可決されたのはもっと注目されていい。この法律は、私有財産を国有財産と同じに保護するというものである。つまり、住宅などの私有を認めた法令であり、これ一つを見ても中国は大転換し、内部から変った▼勿論、新左派の学者らは「(物権法は)社会主義体制を崩壊させる自由主義者の陰謀」と論評し批判する。だが、日本の衆議員に当たる圧倒的な人民代表は、賛成であり、新左派の主張を支持するのは少数派なのである。それもこれも― 小平の唱えた開放主義が浸透し、驚異的な発展を遂げている先進地域に大金持ちが誕生し政府高官よりも立派で豪華な住宅に暮らす人々が急増しているの背景がある▼もし―この「物権法」が定着すれば、今は弾圧の犠牲になっている「言論の自由」と「表現の自由」にも波及するだろうし、一党独裁の権威は崩れ去るのではないか。その点でも「物権法」の成立が持つ意味は大きい。3日付け小欄の終わりから9行目の逆説を虐殺に訂正しお詫び致します。  (遯)