2007年4月6日付け
バンデイランテスTV局(BAND、13CH)が三月三十一日から、日本移民百周年特別番組「Olhar Oriental」(東洋を見る)を始めた。日本の放送局が制作した番組を国際交流基金の協力で入手、ポ語解説付きで吹き替えし、毎週日曜に三十回、十月まで放送する。六月から第二弾や第三弾の番組も企画中。他局に先駆けて特別番組を始めた責任者ミイ・サキさん(50)に意気込みを聞いた。
「いつも母に、あなたの日本語はきたないってしかられるんです」との言葉とは裏腹に、ミイさんは実に流ちょうな日本語をしゃべる。本名は田中みさき。東京生まれで、親に連れられて七歳で渡伯した。
ブラジルで大学を卒業し、テレビ・クルツーラでディレクターの経験もある。国際交流基金のフェローシップにより日本のテレビ研究をし、一九九一年から九五年までの四年半の間、NHK(東京)で子供番組や特別番組のディレクターも務めたという。
昨年五月からはBAND局のスペシャル・グループ局長をはじめ、今回の特別番組では企画から司会まで幅広く担当している。
放送開始したのは、NHKが制作した番組を中心に民放制作分も加えた三十本で、国際交流基金が「TV番組交流促進」プログラムの一環として協力した。毎週日曜午前十一時半から正午までの三十分間放送されている。
四~五月は「日本食」に関する番組。丼、ラーメン、すき焼き、天ぷら、焼き鳥、鍋もの。六月は「先端技術」でロボット、七月は「スポーツと文化」で空手、なぎなた、剣道、弓道、相撲などの伝統スポーツを紹介、さらに青森のねぶた祭り、サンパウロ市でも開催されて有名な仙台七夕祭りを紹介する。
八月には南極の昭和基地での研究について、三十二万年分の氷床掘削の成果も含めて放送。九~十月は「器用さと環境」で、伝統的な鉢を作る陶芸作家の秘伝、造り酒屋、シャチを手なずける技術、鍼灸などと盛りだくさんな内容で、日本に関する幅広い情報を分かりやすく提供する。
放送は吹き替え。ミイさんは「日本語をそのままポ語に訳しても、理解されにくいシーンも多々ある。どう解説を加えるか、判断が難しい」という。
国際交流基金サンパウロ事務所の田村大吾所長補佐は、「三十本の番組提供の協力は基金としては相当多い。百周年に向けた企画として特別に実施することになりました」という。
基金では、すでにテレビ・クルツーラ(2CH)に『ピタゴラスイッチ』(NHK教育テレビ、子供向け)を提供しており、通常は「一国一局」が原則だが、百周年企画としてBANDも承認されたようだ。
ミイさんによれば、六月から始まる第二弾は「あらゆる分野で活躍する日系人の姿を紹介するドキュメンタリー」になる予定だという。そのほか、「ニュース番組やラジオ放送の中でも百周年関係の企画を考えています」と心強い。
グローボTV局は七~八月のパンアメリカン大会が終了した後の九月から、百周年関連番組を始めると先に発表もあったが、今回のBANDが先駆けとなる。
このような取り組みにより、ブラジル社会からの日本の理解度が深まれば、日系社会への関心が高まることも期待できそうだ。