2007年3月30日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】上院が今月七日、犯罪人の刑罰強化法案を可決したことで、ブラジルでは新たな問題に直面することになった。刑務所の収容人員問題だが、新法案はルーラ大統領の裁可を得て四月二日から実施の運びとなるが、これまでに可決されたのは仮釈放の権利を延長することで、これのみで服役囚の刑務所での拘留期間が三分の一延長されることになった。さらに審理中のものもあり、それでなくても刑務所の収容定員オーバーが問題視されているのに対し、さらに拍車がかかるとみられている。
現在全国で収容されている服役囚は四〇万一〇〇〇人で、定員二九万八〇〇〇人に対し三五%に相当する一〇万三〇〇〇人がオーバーとなり、いずこの刑務所もスシ詰め状態となっている。上院は七日、刑罰強化法案を可決、これにより拘留期間が長くなることで、さらにこの問題に拍車がかかる。
新法令は服役囚の三分の一に相当する重罪(殺人、誘拐、強姦、麻薬取り扱い)の犯罪人を対象としたもので、これまで仮釈放が刑期の六分の一(一六%)を終えた時点で権利が発生していたものを五分の二(四〇%)までに延長した。これにより拘留期間は三分の一以上延長されることになった。
定員オーバー問題はこれだけにとどまらず、将来にも不安を投げかけている。現在全国で逮捕状が出されて指名手配となっている犯罪者は一〇万人を超え、警察がこれらを追及して逮捕すると、いよいよ入れる場所がなくなる。
この問題に対し政府をはじめとする関係各省は、刑務所の増設や新設に関心を示しておらず、逆に治安関係の予算を削減しているのが実情だ。このため刑務所の管理も徹底せず、サンパウロ州で州都第一コマンドが刑務所内を支配する土台を築いたと批判されている。
関係者によると、政治家が関心を示さないのは囚人に投票権がなく、票につながらないためだと指摘している。その上でブラジルは下水道と刑務所施設が世界平均より遅れているとして改善を求めている。
いっぽうで軽犯罪の処罰も検討すべきだとの声も挙がっている。すべてを刑務所に送り込むのではなく、強制労働や監察付き所外活動をより多く取り入れて、刑務所の負担を軽くするべきだと主張している。
服役囚の犯罪の内訳は盗み(二九・三%)、麻薬や武器の密輸(一四・四%)、強盗(一二・四%)、殺人(一〇・九%)、武器不法所持(四%)、強盗致死(三・一%)、盗品買い(二・四%)、強姦(一・三%)が主となっている。
刑期は四年以下が二三%、四年から八年までが三〇%と最も多い。八年から十五年が二二%、十五年から二十年までが一一%、二十年から三十年までが八%、三十年から五十年までが四%、五十年以上が二%となっている。
二〇〇五年二月での各国の囚人数は十万人当たりで、アメリカが七一四人とトップで、以下順にロシア(五三二人)、ブラジル(一八三人、ただし〇六年十二月に二二三人に増加した)、メキシコ(一八二人)、コロンビア(一五二人)、アルゼンチン(一四八人)、英国(一四二人)、中国(一一八人)、イタリア(九十八人)、ドイツ(九十六人)、フランス(九十一人)、日本(五十八人)となっている。