選挙高裁=議員は党への忠誠を=当選後の移籍禁止=有権者に対する裏切りと=昨年10月選挙から適用
2007年3月29日付け
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十八日】選挙高等裁判所(TSE)は二十七日、議員に党への忠誠を課する判決を、賛成六票対反対一票で裁決した。同判決は昨年の十月選挙から適用される。当選後に党を移籍した議員は、議員権を無効とされる可能性が出てきた。ルーラ政権の大連立与党へ移籍した議員は、三十六人もいる。一方、ブラジル民主社会党(PSDB)や自由前線党(PFL)、社会大衆党(PPS)などの野党は、二十二議席を失った。移籍取引を行った共和党(PR)は、十五議席へ急成長した。
比例代表で当選した議員が党移籍すると、党に対する獲得票数の横領罪に匹敵すると、TSEは理解した。このTSE見解には、最高裁も同意を表明した。PFLのボルンハウゼン党首が、選挙後に議席を失った党は空席補填の権利が発生するとTSEへお伺いを立てた。
TSEの理解では、議員権は党の所有であって、議員の物ではないという。選挙時の党議席数が、政党政治での党議席数であるとTSEは見なす。党に対する忠誠心を尊重したTSEの判断に、選挙後六カ月も過ぎるのに何も聞かされていなかった議員は驚いた。
党を移籍したのは、寄らば大樹の陰と動いた弱小党の議員に多い。政権政党の近くにいれば、食卓から落ちるパン屑も多い。このTSE判決は、政党政治の軌道修正に挑む政治改革の一環と思われる。
反対票一票を投じたリベイロ判事は、党移籍が議員権の取り消しになるとは不合理であるという。しかし、復党は含まれない。ルーラ大統領の大連立政権は現在、傘下に十三党を納め、下院では過半数の三七六議席を占めている。弱小党から移籍した議員らは、下院小委員会で役職を宛がわれている。
議員三十六人の党移籍は、州議会や市議会でも番狂わせを生じた。果たして党移籍が議員権の無効をめぐっては、今後の法廷抗争となりそうだ。最終的には最高裁決着になると思われるが、これまで最高裁がTSE判決に異を唱えたことはない。
ブラジルの政党は二十年以上、政党政治の体をなしていなかったのでTSEがメスを入れたようだ。TSEの言い分は簡潔明瞭。議会の党議席数は選挙時の党議席数で決まると連邦令に定められている。
投票数不足で立候補者が当選できなくても得票数は党へ計上され、党議席数は得票数を議席指数で割った値で決まる。有権者が立候補者に投票するのは、立候補者の人格も加味されるが、所属党への支持をも意味する。これを勝手に移籍するのは、有権者への裏切りとTSEはみている。
党を追放または除名された場合は、どうなるのか。党方針が常軌を逸して暴走、または変更された場合などの説明がない。選挙前は左翼政治を旗印とし、選挙後に右翼へ、またはその反対へ寝返った場合、猫の首に鈴をつけるのは是か非かが問われる。
TSEが物議をかもしたのは初めてではない。二〇〇二年には連邦政府と州政府、市庁は党の連立関係を統一せよと通達した。結局連立統一は二〇一〇年の期限を与えられた。しかし、最高裁が弱小党差別や一連の通達は違憲であるとの判断を下した。