2007年3月28日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】ブッシュ米大統領の訪伯は、エタノールで両国の絆を深めるビッグ・チャンスかと騒がれたが、大山鳴動して鼠一匹であったとエスタード紙が論評した。米政府の通商担当シュワブ代表が政府と産業界の代表を引き連れて伯米間の通商関係を打診する一方、両国首脳は言葉アソビに終始していた。
今回訪伯の目的は、両国関係の単なる親密化であったらしい。今度は四月初めにルーラ大統領が訪米し、ドーハ・ラウンドの決着や二国間の通商交渉妥結で締めくくるらしい。
シュワブ代表は、通商交渉のグローバル・ラウンドでの決着希望を示唆した。ブラジルは化学製品や電子製品、医療機器、環境資産などの工業製品で市場開放をせよという思惑である。今回の一行来訪には期待した内容がなく、無味乾燥ということだ。
同代表は、ブラジルが米国の要求に対し途上国同盟G―20でも市場開放の音頭を採れというのだ。そうすれば農産物を輸入するという。しかし、ブラジルとメルコスル加盟国、インドなどの目的が大きく異なることを、ブラジル外務省は熟知している。
それだけを言いたいなら、米大統領も同代表も鳴り物入りでブラジルまで来る必要はない。さらに米政府はブラジルなど途上国の農産物に対し、工業製品と同条件で市場解放をするなら、条件を改善する用意があるという勝手なもの。これも新しい話ではない。
米大統領の訪伯がブラジルを失望させたのは、ブラジル産エタノールへの輸入障壁に関するメモである。二〇〇九年までは何も出来ない。それ以後は議会が決めるという。同代表は帰り際、さらに冷水を浴びせた。グローバル交渉では、エタノールの二・五%関税を議題から外すと通告。従ってエタノールの市場開放はないという。
米国の姿勢から見て、再生可能な燃料開発のプロジェクトは茶番劇といえそうだ。エタノールでのブラジルの国際競争力は、誰もが認めるところである。だから誰もエタノールに対し市場開放をする国はないし、エタノールに代わる安価なエネルギー開発に昼夜奔走している。
エタノールの国際研究開発を唱えるのはブラジルだけで、現実は全く違うことをわきまえるべきだ。ブラジルは将来ブラジルの市場を荒らす競争国にも、好意的に技術提供を申し出ている。ブッシュ米大統領の来伯は、軒先を貸して母屋を盗られることを警告したのではないか。