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身近なアマゾン(33)――真の理解のために=自然保護活動と山火事=何億の動植物が灰になる?

2007年3月13日付け

 自然保護と人間の未来について(1)
 南米アマゾンで鑑賞魚の採集を正業にしていて、その反対の位置にある自然保護の問題を論ずる、という矛盾を感じながら、今回も飛行機で飛んでいるアマゾン上空からの景色を眺めていている。
 各地の自然状況変化を長期にわたって観察していると、今後地球がどのようになっていくのか、という命題を突き付けられているような錯覚にとらわれている。
 最近は、ワシントン条約(ワシントンで採択された絶滅寸前動植物保護国際法)のことや、それに追随する自然保護問題が世界で頻繁に取り上げられるようになった。
 例えば、アフリカに生息しているゴリラやチンパンジーなどは、このまま放っておいたら、近いうちに人類に食べ尽くされてしまう、とか、アフリカ象が増え過ぎ、許可が出て多数の間引き屠殺が実行された、とか、普通の感覚では考えられないような報道が新聞やテレビニュースで報道されている。
 アフリカに住む先住民には、類人猿を珍味として食べる習慣があるそうだし、中華料理でも猿の脳ミソが珍重されるそうな。特に奇異な話ではないのかもしれない。残り少なくなった類人猿を食べたり、象を殺したり、という行為に対して、本当にそれで良いのだろうかと考えたりしている。
 昨年八月の話、マナウスを訪れた帰り、帰りの飛行機がタパジョス川からクィアバ市を結ぶラインを飛行していた。退屈な機内の窓から夕暮れの下界を見ていたら、テーレスピーレス川(タパジョス川上流)からマットグロッソのアルト・フロレスタ市の上空、地理的にはパラ州とマット・グロッソ州境近辺だった。下界が燃えていた。
 燃えていた、といってもそれは中途半端な規模でないことは、筆者にはしっかり分かっていた。その規模を説明すると、日本で東京~大阪のフライトで、羽田を離陸した飛行機が伊豆半島上空では一万メートルくらいまで上昇するが、静岡上空あたりで下界の日本列島を見ると、天気のよい日には遥か彼方に、日本海あたりまで見える。
 読者諸兄の中にも、そういう景色を見た人もおられると思う。このマナウスからの飛行機から見えた火事は、遥かかなたまで一直線に火の線が走っていたのだ。
 ということは、規模にしたら日本列島を縦断しているような規模の火事だった、ということが想像できる。恐らく、その野火のラインは延長距離三百キロ以上に及んでいただろうと確信している。
 ブラジルでは、このような火事は毎年のようにあることなので、ニュースにもならない。
 この下界に展開している火事で、何億本の植物が、何億匹の動物が、燃えて灰になっている。自然保護活動と現実に起こっているこの事実を見てしまうと、非常に大きな矛盾を感じてしまうのだ。どう説明するればよいのか、このような現象の連続で実際に自然は確実に衰退荒廃していっている。つづく (松栄孝)

身近なアマゾン(1)――真の理解のために=20年間の自然増=6千万人はどこへ?=流入先の自然を汚染
身近なアマゾン(2)――真の理解のために=無垢なインディオ部落に=ガリンペイロが入れば…
身近なアマゾン(3)――真の理解のために=ガリンペイロの鉄則=「集めたキンのことは人に話すな」
身近なアマゾン(4)――真の理解のために=カブトムシ、夜の採集=手伝ってくれたインディオ
身近なアマゾン(5)――真の理解のために=先進地域の医療分野に貢献=略奪され恵まれぬインディオ
身近なアマゾン(6)――真の理解のために=元来マラリアはなかった=輝く清流に蚊生息できず
身近なアマゾン(7)――真の理解のために=インディオの種族滅びたら=言葉も自動的に消滅?
身近なアマゾン(8)――真の理解のために=同化拒むインディオも=未だ名に「ルイス」や「ロベルト」つけぬ
身近なアマゾン(9)――真の理解のために=南米大陸の三寒四温=一日の中に〝四季〟が
身近なアマゾン(10)――真の理解のために=アマゾンで凍える?=雨季と乾季に〝四季〟感じ
身近なアマゾン(11)――真の理解のために=ペルー国境を行く=アマゾン支流最深部へ
身近なアマゾン(12)――真の理解のために=放置、トランスアマゾニカ=自然保護?改修資金不足?
身近なアマゾン(13)――真の理解のために=クルゼイロ=アクレ州の小川で=狙う未知の魚は採れず
身近なアマゾン(14)――真の理解のために=散々だった夜の魚採集=「女装の麗人」に遭遇、逃げる
身近なアマゾン(15)――真の理解のために=眩しい町サンタレン=タパジョス川 不思議なほど透明
身近なアマゾン(16)――真の理解のために=私有地的に土地占有=貴重な鉱物資源確保目的で
身近なアマゾン(17)――真の理解のために=近年気候変異激しく=東北地方、雨季の季節に誤差
身近なアマゾン(18)――真の理解のために=ピラニアよりも獰猛=サンフランシスコ川=悪食ピランベーバ

身近なアマゾン(19)――真の理解のために=異臭発しても観賞魚=円盤型、その名の意味は?
身近なアマゾン(20)――真の理解のために=ディスカスの自衛方法=筆者の仮説=「あの異臭ではないか」
身近なアマゾン(21)――真の理解のために=タパジョス川の上流に=今は少ない秘境地帯
身近なアマゾン(22)――真の理解のために=ゴールドラッシュの終り=河川汚染もなくなった
身近なアマゾン(23)――真の理解のために=環境破壊を防ぐ行動=国際世論の高まりのなかで
身近なアマゾン(24)――真の理解のために=乱開発された土地に大豆=栽培の競合もつづく
身近なアマゾン(25)――真の理解のために=コロンビアとの国境近くで=知人の訃報をきく悲哀
身近なアマゾン(26)――真の理解のために=インディオの「月」の解釈=ネグロ川上流できく
身近なアマゾン(27)=真の理解のために=肥沃な土地であるがゆえに=自給自足生活が営める
身近なアマゾン(28)――真の理解のために=モンテ・アレグレの壁画から=古代日本人の移住を思う
身近なアマゾン(29)――真の理解のために=人間に知られないまま絶滅=そんな生物も多かった?
身近なアマゾン(30)――真の理解のために=命を賭した移民の開拓のあと=説明できない悲哀が…
身近なアマゾン(31)――真の理解のために=漁師に捕獲されれば=食べられてしまう=ペイシェ・ボイ「雄牛魚」
身近なアマゾン(32)――真の理解のために=日本語を話した?カワウソ=すごく笑いがこみあげて来た